読書録

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『この不寛容の時代に ヒトラー『わが闘争』を読む』 佐藤 優 著

  コロナ禍のもと、ワクチンがなかなか普及しないが、本著は、社会や政治についてのワクチンになるかも知れないという印象をもつ。

 講義形式を文書におさめた内容で、休憩時間の合間に出る課題に対して、的確に回答が思い浮かばず、また、歴史的な経緯や背景、文書など、著者の博覧強記ぶりには驚かされる。ただ、事実や歴史をもとにした言葉や警告は、改めてしっかりと考えておく必要があると受け止めた。
この不寛容の時代に: ヒトラー『わが闘争』を読む

この不寛容の時代に: ヒトラー『わが闘争』を読む

  • 作者:優, 佐藤
  • 発売日: 2020/05/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

発刊した新潮社のサイト↓

www.shinchosha.co.jp

 覚えておきたいポイントや、本署の講義で紹介されている本を、以下引用してメモ↓大学時代のゼミ学習を思い出すぐらい、濃厚な内容だった・・・
まえがき
p7:(コロナの国際社会への影響について)僕は国内では行政権が強まり、国際関係ではグローバリズムが後退すると見ている。
p9:ヒトラーは、第一次世界大戦後、不安定になった国民心理をデマゴギーによって巧みに操って権力を奪取した。新型コロナウイルスによる危機を利用して、権力を掌握する独裁者型の政治家が台頭する可能性を軽視してはならない。その意味で、『わが闘争』の負の遺産から批判的に学ぶべき事柄が少なからずある。
 
1 不寛容はどこから生まれるか?
p12:『ファシズムの正体』 

 p12:『高畠素之の亡霊』 

p16:『わが闘争』 黎明書房1961年 角川文庫に1973年、2015年12月31日著作権消滅でバイエルンの現代史研究所から注釈付きで 

 p14:『ヒトラーの秘密図書館』  

ヒトラーの秘密図書館 (文春文庫)

ヒトラーの秘密図書館 (文春文庫)

 

 p19:『永遠のファシズム』 エーコ 

永遠のファシズム (岩波現代文庫)

永遠のファシズム (岩波現代文庫)

 

 

p21:社会人になっても、高校レベルの教科書を揃えておくことです
p36:『地球星人』村田 『伊藤くんA to E』柚木 
地球星人(新潮文庫)

地球星人(新潮文庫)

 
伊藤くんA to E (幻冬舎文庫)

伊藤くんA to E (幻冬舎文庫)

  • 作者:柚木 麻子
  • 発売日: 2016/12/06
  • メディア: 文庫
 

 ←近未来小説で今の危うさが表現されているとのこと

p39:いまの日本でも、自分たちの身の回りで、不寛容さにおいてナチズムを小型にしたような出来事はいくらでも起きるのです。
 
2 お互いの「耐えがたさ」
 
p69:『ナチズムとユダヤ人 アイヒマンの人間像』 村松剛 

 

p83:映画『新しき土』1937年 日独 原節子主演 
原節子 十六歳 ~新しき土~ [DVD]

原節子 十六歳 ~新しき土~ [DVD]

  • 発売日: 2009/04/24
  • メディア: DVD
 

 ←日本人を第二と見ていたが、同盟を受けて日独で作ったとのこと

 
p89:『愛国商売』 古谷経衡 
愛国商売 (小学館文庫)

愛国商売 (小学館文庫)

 

 ←古谷氏は当初ノンフィクションを構想していたとのことで、著者が注目している。

3 性も健康も国家が管理する 
p143:人種は三つに分かれる。一つは文化を創造できる人種。次に文化を模倣する人種。そして、文化を破壊する人種。文化創造人種、文化支持人種、文化破壊人種、この三つに分かれる。日本人は二番目の文化支持人種だというわけ・・・
p122:『アカガミ』 窪美澄 
アカガミ (河出文庫)

アカガミ (河出文庫)

  • 作者:窪美澄
  • 発売日: 2018/10/05
  • メディア: 文庫
 
4 知性の誤使用としての反知性主義
p160:角川文庫の上巻377-384pが、戦前の日本においては封印されていた部分。これがヒトラーの日本観なんだ。こんな相手と同盟を組んでも、うまくいくはずがない。
p166:「子どもを産まない女性は云々」なんて発言する政治家は明らかにヒトラーに相通じる発想があるってことですよ。・・・村田、窪の近未来小説で危うさ
p176:「出たい人より出したい人」は大政翼賛会の選挙スローガン、学生はボランティアで成績に反映は、「翼賛運動をやれって言っているのと同じ」
 
5 総統の逆問題
p194:真実は隠されている、マスコミは嘘しか言わない、真実は私しか知りませんと、こういう形でやればいい。そういう荒唐無稽な演説で人間を動かせるんだ。そんなふうにヒトラーは公言して、恐ろしいことに、実際に言ったとおりのことをやってのけました。…これを使って、例えばSNSうまく結びつけば、今なお政治的にいろんなことができるでしょう。
p224:自己犠牲の精神を徹底させることで、他者の生命を奪うことに対して無感覚にさせていく。この回路をヒトラーは見事に作り上げました。
6 いま生きるナチズム
p235:y生産性高/低↓、x不快/快適→、
第一象限は生産性が高くリラックスして働く 図で<エリート>、2<ワーカホリック>、3<バーンアウト>、4<マイペース>
 
7 歴史は繰り返すにしても
p297~8:(一貫しているのはアーリア人種の生存、生き残りという問題…生き残るためと言えば、何でも許されてしまう…ナチズムとは何かに関しても定義不能・・・特徴は反知性主義+知性自体を憎む)
p301~:知識が、今の日本を生きるわれわれがナチズム的現象に出会ってしまった時のワクチンになればいいと思います。
(防ぐ方策や気構え?)反知性主義ではなく、知性で対抗すること。具体的には客観性/実証姓のないものに対しては疑いの目を持っていい。…あとは、分かりやすさへの疑問。…常に疑問を持つこと
p311:なぜ人間は生まれて存在しているだけで意味があるのかと言えば、それは「意味があるのから意味がある」のです。…理屈では説明できない。なぜなら、それは人知を超えた事柄だからです。…そして、「そういうふうになっているんだ」と認識しておくことが非常に大事なんです。

 
 出版社のサイトで、編集担当者が「コロナ禍で(その前に検察庁法改正の動きもありましたね)、今後おそらく行政権が強化され、司法権立法権が相対的にないがしろにされそうな時代だからこそ、読んでおくべき一冊…本文(あとがきでなく)の最後の一ページ半だけ、まず読んでみてください。ここで示される佐藤さんの思想に共感できる方には、これは大切な本になるはず」と紹介していたが、まさに、今の時代に意味のある一冊だと感じた。

 

 なお本著は、2018年11/3・4に行われた新潮講座を再構成したものとのことで、講座にも興味を持った↓
 
 それにしても、著者の知識や姿勢には、驚嘆する。いまフォローしておきたい、論者の一人で、注目していきたい。これまでのブログで一応、著者名で検索↓
 
 
 
 
 
{2021/3/26-4/2読了、記入は4/3(土)}