読書録

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『はじめての宗教論 右巻』 佐藤優 著

はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

本書の扉には、「キリスト教神学に照準し、聖書の正しい読み方から神学的思考の本質までを明快に解説。啓示とは何か?人間の原理とは何か?核心的な問題の考察を通して、21世紀を生き抜くための知的体力が身につく実践的宗教論」と書かれているが、なかなか難しい内容で、著者の知的バックボーンの深さに感嘆させられる。

幼い頃、教会の日曜学校に通っていたこともあったが、その内容の多くを忘れてしまった。キリスト教神学について、著者は基礎訓練だけで16年かかり、マスターすれば聖書に基づいて森羅万象を神の名の下に正当化でき、どんなことでも説明できるようになると指摘しているが(p154)、一冊の本で理解しようという方が無理なのかも知れない。

5/12付けの毎日新聞で、著者は普天間基地問題について寄稿し、「沖縄との同胞意識回復を」という主張をしているが、本著でも沖縄の集団自決について触れた部分があり、本著のテーマとは別に、沖縄への思い入れがあるのかと感じた。

p105:(オッカムの剃刀の例示)沖縄における集団自決の話で「軍命があったかどうか」ということを証明するには、軍命が一例確認されればそれで良い。一例さえ確認できれば、「あった」ということですから、その先の議論はもはや必要ありません。

p168:(不当拡張と責任回避)文芸評論家の山崎行太郎が、沖縄集団自決をめぐって、曽野綾子渡嘉敷島でのルポルタージュに対して疑念を示している。曽野は取材対象と一対一で会って話したからその内容は真実だと言っているが、それはあまりにもナイーブな発想ではないか。人はもともと、ものごとを膨らませたり相手に合わせたりする傾向がある。歴史認識のようなセンシティブな問題にナイーブでプリミティブな発想を持ち込むのは危険であると、山崎は言っています。


宗教と哲学の解説部分は勉強になるが、以下の一文が、一番しっくりくる物事の捉え方かなあ、と感じた。
p214:ある人にとって絶対的なものはある。しかし、それはその人にとってのみ絶対的なものである。人は複数存在するのであるから、絶対的なものも複数あるのは当然のことです。そして人は、自らの信じる絶対的な原理に従って、この世界について語る。そこで語られた異なる言説の間で折り合いをつけるという作業を繰り返していくしかありません。

p268:私はキリスト教徒である。キリスト教という宗教は私にとって、生き死にの原理となる主体的問題だ。・・本書では、歴史を作り出す宗教の力、人間の知的営為に与えた神学の意義など、宗教の積極的・肯定的側面を中心に議論を展開した。

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