読書録

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老いの才覚

老いの才覚 (ベスト新書)

老いの才覚 (ベスト新書)

高齢化社会を迎え、著者の問題意識としては、年のとり方を知らないわがままな老人が増えることが大きな問題だとする。そして、将来を考えれば、自立した老人になるために、老いの才覚=老いる力を持つことが重要だとして、目次の第二章からそれぞれに対応する7つの力について、エッセイ風にまとめている。

今も産経一面の左肩に論説が掲載され、かつて日本財団の会長もつとめた意気軒昂な方であり、沖縄での集団自決をめぐる論争を含めて、保守論壇の重鎮というイメージがある。

本著には、「悲しみや恨みをしっかり味わってこそ、人生は濃厚になる」(p32)ことや、「受けるより与える側に経つと幸せになる」(p70)、「その人の生涯が豊かであったかどうかは、その人が、どれだけこの世で「会ったか」によって、はかられるように私は感じています」(p114)、「(孤独と絶望の)究極の感情を体験しない人は、たぶん人間として完成しない」(p168)など、なるほどと感じることが多かった。

その一方で、老化度をはかる目安としている「くれない指数」=してくれないとぼやことへの批判や、何故才覚のない老人が増えたのかという原因分析で、基本的な苦悩がなくなったことに加えて、「戦後の教育思想が貧困な精神を作った」(p23)として、日教組が「人権」「権利」「平等」を主張した教育を受けた人たちが老人世代になってきてツケが回ったというのは、今の高齢世代の分析からすると、あまりに単純化しすぎているように思う。戦後教育を批判すればいいという時代背景ではないように思うから。

著者はカトリックの学校で育ったことで、性悪説にたつことで、人と付き合っても感動することばかりだというのは、考え方としては参考になる。このキリスト教信仰が、自由主義や奉仕活動と密接に結びついているのだろうか?

年代的にはまだ先のことであるかも知れないが、心構えとしては、いろいろ考えておきたいところではある。


(目次)
第1章 なぜ老人は才覚を失ってしまったのか;

第2章 老いの基本は「自立」と「自律」;
←1:「自立」と「自律」の力

第3章 人間は死ぬまで働かなくてはいけない;
←2:死ぬまで働く力

第4章 晩年になったら夫婦や親子との付き合い方も変える;
←3:夫婦・子供と付き合う力

第5章 一文無しになってもお金に困らない生き方;
←4:お金に困らない力

第6章 孤独と付き合い、人生をおもしろがるコツ;
←5:孤独と付き合い、人生を面白がる力

第7章 老い、病気、死と馴れ親しむ;
←6:「同」力

第8章 神様の視点を持てば、人生と世界が理解できる;
←7:神さまの視点を持つ力

{4/27-29読了、記入は30}