読書録

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風通しのいい生き方

風通しのいい生き方 (新潮新書)

風通しのいい生き方 (新潮新書)


本著は、「新潮45」連載の「人間関係愚痴話」(2012年8月号〜2013年11月号)を改題のうえ、まとめたもの。
以前、産経連載をまとめた『老いの才覚』( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20120429 )については、この読書録に記した。この間に、東日本大震災原発事故があり、原発を認めるかどうかに関しては、「自分で判断ができないから、尊敬する日本人の大勢が決めた運命に従う決意をしているp40」として、原発ゼロの理想をいうのは簡単だが可能かどうかはわからず、「政治家がもっと強力な指導力を持つこと」「国民がもっと科学的に冷静になり、常に最善の策というのではなく、次善の策でもとることができるような理解力をもつことだろうp207」と記している。この問題については、判断が難しく、著者の苦悩が伺える。『老いの才覚』では、著者の厳しい姿勢を感じたが、本著では、「互いの存在感を薄める距離」について書いているところなど、少しまろやかになったのかと感じた。


出版した新潮社のサイト⇒
【正式名称】…新潮社ホームページ
【トップページURL】…http://www.shinchosha.co.jp/ この本(目次あり)⇒ http://www.shinchosha.co.jp/book/610564/


印象に残ったポイントや備忘録を以下に引用。
◇p29:深く絡み合ったら、お互いにうっとうしくなる。世間の風が無責任に吹き抜け、お互いの存在の悪を薄めるぐらいがちょうどいい、と私は思ったのである。

◇日本の休日は年に120前後とおよそ3分の1だと、フランスのように怠け者国家になりつつあり、貧困な時代に育った著者は、ろくなことにならないと批判p66

◇松井健氏の著書「性愛のテーマー逸脱と制裁ー」から、パシュトゥーン人の「不義私通を犯した者を殺すように規定」し、逃げてきた若い夫婦を庇護した有力者の家族で、有力者の息子と逃げてきた妻が姦通したため、この息子を有力者が射殺し、夫が妻を射殺、この夫を法的に自分の息子にしたという物語を紹介する。p91-99 どう考えればよいのか、確かに文学や演劇のテーマになるような気がする。

◇p132:人は言動のうち、どう動いたかによって多くは判断される、と私は思っている。

◇1992〜3年にかけ、プルトニウム輸送が行われたが、この船の位置を反対派の飛行機に同乗して取材したメディアを乗組員の言葉で批判p150

◇p210:私は今までの人生で会った人の60パーセントぐらいを心から好きになったと言える。私が人を好きになる理由の中には、相手に尊敬を覚えることが最大の要素になっている。頭がいいからということが理由になる時もあるが、ものごとを正視できるという冷静さを尊敬した場合も多い…(中略)…権威主義者か、思想か行動においてささやかな勇気の片鱗も持ち合わさない人たちだった。この二つの性格に、私は全く魅力を感じなかったのである。(←35%)…(中略)…残りの5%くらいを、私はヒソカに嫌悪し侮蔑して、すぐに遠ざかった。他人に謝れ、という人は、この5%にあたる。
←このあと、韓国の従軍慰安婦問題に触れ、その後、隔離病棟にいた患者たちを支援する「聖ラザロ村」の取り組みを紹介している。


タイトル通り、「風通しのいい」生き方はしたいものだ。

{10/5-7読了、記入は12}