読書録

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生きてこそ 95歳。幸福になるための智慧六十話。

生きてこそ (新潮新書)

生きてこそ (新潮新書)

 釈尊の大きな愛と赦しに満ちた言葉「この世は美しい。人の心は甘美である」が、明日を生きる力を与えてくれるだろうp6、書けたのは美しい人間肯定の言葉のおかげであったp198と、著者は紹介している。

 本書は京都新聞に連載したエッセイをもとに編まれた内容で、テーマごとに時期は前後するが、掲載日も示されているので、大震災やテロ、安保法制、原発など、時事的な問題への向き合い方もうかがい知ることができる。

 徳島の城東高校の出身で、昭和15年東京女子大に入学し、戦時中に体験した思いが、第5章の「嫌な時代の空気にあらがう」を中心に、以下のように警鐘を鳴らしている。
言論の自由が奪われた国民は、舌と羽を切りとられた鳥になる。その悲惨さは、まだ全身の細胞が覚えているp21
・欲しくないものは原発でもアメリカ軍基地でも「ノー」と叫んで立ち上がるべきではないだろうかp164
・(テロ対策)仇を仇で返せば永久に仇の尽きることはないと釈迦は教えているp173
・戦争時の体験のない政治家たちによって運営されている戦後70年の日本の行方が日々不安でならないのは、死齢に達した老婆の妄想にすぎないのであろうかp179
・意識の底に眠っていたあの不気味な足おとが、近頃日ごとに多くに大きくなって、私の耳に近づいてくるp182



発刊した新潮社のサイト⇒ http://www.shinchosha.co.jp/book/610720/


 このほか、今後に生かせそうな内容をいくつか引用してメモ
・インチキか宗教かの判別方法は、その宗教団体が、金もうけをしているかいないかによって決めればいいと言い続けているp16
・人間の幸福とは、衣食住がほどほどに満たされて、健康で、精神が自由であることだろう。自由とは、人間が自分の思ったこと、考えたことを、誰にも遠慮もなく口外でき、したいことができる、いやなことはしないですむということではないだろうかp19
・(日野原重明先生が)「老いとは衰弱ではなく成熟するものだ」という自説をいきいきと話して下さるp36
・他人の日記で一番強烈な印象を受けたのは、大逆事件で死刑になった菅野須賀子の「死出の道艸みちくさ」p184
・40年ものを書きつづけてきて、最後にたどりついたのは、最もわかり易く、正しい日本語を使い、自分の考えを、率直に読者に伝えたいと思うことであったp190
・想像力が欠如して、他者の痛みや苦しみに対する思いやりなどが日と共に希薄になっている。自分さえよければいいという大人たちの非情な考え方は、子供にそのままうつされている…日本の本来の普遍的価値観を取戻し、それを子供たちに伝えていく義務があるのではないかp201


 ←最後に引用した「自分さえよければいい」というのは、昨今のアメリカ・トランプ大統領アメリカ第一主義による貿易、環境ほか様々な課題、また、国内では森友加計問題、財務省セクハラ、日大アメフト悪質タックル問題など、大きく伝えられるニュースで共通に感じ、でもどうにもならないという慣れみたいなところもあって、正直、怖いところではある。大先達の言葉は重く受け止めながら考えたい。



{2018/5/28-29読了、記入は6/3日曜}