- 作者: 太田肇
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/02/16
- メディア: 新書
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“柔らかい全体主義”に席巻されたいまの「日本の組織」は、もはや限界だとして、統合より分化型の個人を尊重する仕組みにかえるべきだとする著者の主張は、さまざまな事例を引きながら、説得力がある。
事例のうち特に、全日本国民的美少女コンテストの歴代受賞者の一覧を示しながら、グランプリに選ばれたタレントよりも、選ばれずに特別賞などを受賞しているタレントが活躍しているということは、確かに不思議な現象だ。(p94)その理由は、多くの人が評価するので角がとれた人材になりやすく、すると新奇性・意外性に導かれるような発展がないという(p105)ユニークさや変化が求められるわけで、これはなかなか難しい。
第3章(p68〜)の「管理強化が不祥事を増やす」という内容も、昨今の不祥事を見るにつけ、再発防止やコンプライアンスの徹底というかけ声をかけてもダメなのはそうだと思う。「最大の抑止力は本人のプライド(p80)ということは肝に銘じておきたい。
入試に対する批判も、多大な時間とエネルギーが必要な受験勉強より、むしろ抽選を取り入れて大学自体を改革せよというのも、自らの経験を振り返って共感するところがあった。
出版した新潮社のサイトに目次あり⇒ http://www.shinchosha.co.jp/book/610656/
PTAや町内会についての分析も鋭い。本著の出版は2月だが、タレントの菊池桃子さんがことし(2016年)3月25日に「1億総活躍国民会議」に出席して、ワーキングマザーにとって「PTA活動っていうものが難しい」と発言したことが波紋を呼んだ。本著では、全員参加原則や生活の多様化が考慮されていない行事や運営方法、過剰な負担が問題だとして(p185_187)、1)自由参加、2)最小負担、3)選択 の3つの原則をあげる。
そして、現実の課題として、いかに強制や押し付けをなくし、なおかつ公平な負担で必要最小限の共益活動を行うかだとして、市場メカニズムの導入を訴えている。いっそアルバイトを雇うか、その雇う金を報酬として払うということもあり得るとのこと。「やらされ」感が「やりたい」感に変わりますように。
{2016/6/6-17読了、記入は28}