読書録

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福翁自伝 現代語訳 ちくま新書 912

現代語訳 福翁自伝 (ちくま新書)

現代語訳 福翁自伝 (ちくま新書)

 現代語訳で息づかいが伝わり、とても面白い内容だった。かつて一度は読もうとして挫折していたような記憶もあり、時代の変革期にこうした人物がどう育ち何を考えていたか、刺激を与えてくれた。


 はじめに、で編訳した齋藤孝氏が「便所でお札を踏みp31、神社のご神体を勝手に捨ててしまうp32」「人をだまして河豚を食わせてみるp102」「遊女のニセ手紙を書く」「子どもの頃からの大酒のみ」p008のエピソードを抜粋しているが、これらにはびっくりした。


 身分家柄絶対の門閥制度に怒りp22を感じ、まずは長崎でオランダ語を、横浜へ行って通用しないことを知り英語に切り替え、咸臨丸に乗ってアメリカへ。明治維新後も古風一点張りの攘夷政府とみてp190官にはつかず、自由な精神で教育にあたる姿はとても清々しい。大阪にいたとき、緒方洪庵適塾跡も訪れたことはあったけど、そこでの塾生の勉学というのも生き生きと描かれていて、先に読んでいれば、また違う見学の仕方があったかもと思った。また授業料を始めたのが、慶應義塾が初めてということを知ったp192。



発刊した筑摩書房のサイト→ http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480066206/



 東洋と西洋を比較して何が大事かと説くところが印象に残り、以下に引用
◇東洋にないものは、形があるものでは数理学と、形がないものにおいては独立心とのこの2点である…人間万事、数と理の世界の外に出ることはできず、独立の外に頼るところがない、というこの大切な根本意義を、わが日本国では軽く見ている。これえはさしあたって国を開いて西洋諸強国と肩を並べることはできそうにもない。p196
◇私の考えは、塾に少年を集めて原書を読ませるばかりが目的ではない。なんとしてでも、この鎖国の日本を開いて西洋流の文明に導き、富国強兵にして世界中に遅れを取らないようにしたい。p214


 最後に、心構えとして「世を渡っていくときの方法を一括して手短にいえば、すべて極端な事態を想定して覚悟を決め、まさかの時に狼狽しないように後悔しないようにとばかり考えています」p242ということなのだが、若い頃の破天荒さを考えると、そういう境地に落ち着いたと言うことかとも考える。


{2018/5/21-25読了、記入は6/3}