読書録

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トランプのアメリカ 漂流する大国の行方

トランプのアメリカ 漂流する大国の行方

トランプのアメリカ 漂流する大国の行方

 朝日新聞アメリカ大統領選取材班が、トランプ政権誕生にいたる経過や関係者の分析を一冊にまとめている。ことし1月時点での見通しなども記載されているが、先がよく見通せない状況は現在も続いていて、HPの「今後がわかる」というPRは、どこまで的を得ることになるか、興味深い面もある。

 
発刊した朝日新聞出版のサイト→ http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18840


 いくつかのポイントを、備忘録として引用
◇(トランプ大統領がテレビ討論で)「私の欠点?他人を絶対に許さないことだ」異常なまでの攻撃性と、人から好かれやすい性格。トランプの中には、両極端の「二つの顔」があるのだろうか。p114

◇ヒラリーを代表する言葉「人権は女性の権利であり、女性の権利は人権なのだ」p203

◇メール問題、さらにいえばヒラリーの秘密主義が、初の女性主要候補のホワイトハウスへの道を絶ったといっても過言ではない。p214+潮目が変わったのは、投票日が11日後に迫る10月28日、クリントン国務長官時代に私用メールアドレスを使っていた問題で、新たなメールが見つかったとして、FBIが捜査の再開を発表した出来事だp56

◇「格差が深める米の分断」ハーバード大のロバート・パットナム教授:トランプ氏の支持層の二つの特徴は、低学歴、低所得者層からの支持で白人男性に顕著+社会的なつながりが少ない人たち『孤独なボウリング』p223


久保文明東大教授「塹壕の中のアメリカ」トランプ大統領誕生の本質>の分析はわかりやすく、以下に引用。
◇トランプ氏とサンダース氏には、(中略)自由貿易エスタブリッシュメントを痛烈に批判するという共通点があった。この2人が旋風を巻き起こした今回の大統領選は、この点で記憶されることになりますp303
◇今回の政権交代はまさに、「低学歴白人層による疑似革命」であったといえるかもしれませんp304
◇トランプ氏は、党大会の指名受諾演説でこうも言いました。あなた方は「忘れられた人々」である、と。これまで誰も皆さんの声を代弁してこなかったが、自分こそが皆さんの声を代弁する、と。こんなメッセージが支持者の心に響いたのは間違いないでしょう。p308

◇結局、メディアは公平公正な報道ではなくて、特定の立場を伝えているのでは亡いかと疑われ、長期的にはメディアの信頼性を損なうことになったという見方もあります。一方で、トランプ氏はソーシャルメディアをうまく使いました。p310
◇トランプ氏は変化を象徴し、クリントン氏は現状維持の候補だった。怒りや絶望を感じて、ともかく現状を変えてほしいと切実に祈る人々にとって、トランプ氏に託すしか、現状の劇的な好転は見えてこない。これが選挙の背景に存在した現実です。p313

◇トランプ氏の政策の柱は、第1に反不法移民、第2に反自由貿易主義すなわち保護貿易主義、そして第3に反国際主義すなわち孤立主義の3点セットでした。p314
◇トランプ氏本人、あるいはトランプ氏の支持者の世界観が、塹壕の中のアメリカで、塹壕を掘って、その中にこもるアメリカというイメージp318

◇今回の大統領選の特徴p321
1)二大政党が政治経験の本当にまったくない人を大統領候補に指名するのは本当に異例
2)国際主義的な傾向を持つ共和党が、トランプ氏のように孤立主義的傾向を持つ候補を指名したことも異例
3)二人ともTPP反対といったこと。どちらも保護主義的な政策を前面に掲げたのは戦後初めて
4)いくつかの争点では、トランプ氏の方が左にいたこと。徹底的な保護主義を提唱しイラク戦争に反対
◇長期的な懸念は、共和党の将来で、先の3点セットを模倣する政治家が出てくるかもしれないp323


 トランプ米大統領が就任して、7月20日で半年となったが、ホワイトハウス中枢の大統領首席補佐官や報道官、広報部長など、辞任や更迭が相次いで、さらに混迷が深まっている。
 支持率も、米大学調査で33%に低下して過去最低だと伝えられるなど、先行きが見えない状況が続いている。
 北朝鮮ICBM発射実験などを受け、今後どう展開していくのか。夏休みシーズンを迎えながら、なかなか落ち着かない。


{2017/8/2-8/4読了、記入も同日深夜}