読書録

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論壇の戦後史 平凡社ライブラリー 873

増補 論壇の戦後史 (平凡社ライブラリー)

増補 論壇の戦後史 (平凡社ライブラリー)

 毎日新聞で論壇記者をしていた著者が、戦後から今に至るまでの歴史を解説している。

 『世界』の創刊と、『中央公論』と『改造』の復刊、『文藝春秋』の登場など、いわゆる総合雑誌が、どういう形で生まれ、論壇を形成してきたのか、あまり接してこなかった内容だけに、興味深かった。

 とりわけ、丸山真男氏の「超国家主義の論理と心理」(1946年世界5月号)が与えた衝撃、というのが、これは学生時代に読んだ覚えもあるので、そういう背景があったのかと初めて知った(p72)。それこそ「現代政治の思想と行動」のトップに収められている論考で、ご本人を囲んでお話を聞いた覚えもかすかにあるのだが、定かでないのが悲しい・・そしてこの論文は、天皇制擁護の津田左右吉論文への対応に困った当時の世界の編集長・吉野源三郎氏が、丸山真男氏に依頼したという。


発刊した平凡社のサイト→ http://www.heibonsha.co.jp/book/b373042.html


  講和条約をめぐる平和問題談話会の生命や研究報告が、再軍備反対・非武装中立という護憲・改憲反対の原理的立場として生き続けるp116というが、このほど決まった防衛計画大綱や中期防で、「いずも」の空母化が盛り込まれるなど、なんとも隔世の感がある。

 中盤で紹介される、高坂正堯のデビューp180「現実主義者の平和論」(1963年中央公論1月号)は当時29歳。最近、新書も出ているが、論的にした坂本義和p182、や現実主義者として永井陽之助が登場するが、この方々の本は、それこそ学生時代に読んだことを思い出す。学生時代前後は、『世界』も結構読むことがあったが、最近はほとんど読むことがなくなってしまった。

 著者は最後の方に、戦後の終焉で戦後論壇も消滅したのは当然だったp225、高度情報社会とも呼ばれる時代に活字は特権的な地位を失ってはいるものの、論ずべき考えるべき問題はたくさんあり、過去を振り返ることで、今後のあるべき論壇の形を考えることになるというのは、そうかも知れない。


 トランプ大統領の登場や、世界で進む分断の中で、どう考えていけばいいのか。国内でも、安全保障関係をめぐっては、主要紙の間でも主張の対立があり、正反対の論調がある。

*12月15日(土)朝刊、辺野古土砂投入で
朝日新聞:辺野古土砂投入を強行+社説)民意も海に埋めるのか、
産経新聞:辺野古に土砂投入+主張)普天間返還に欠かせない、

*12月19日(水)朝刊、防衛計画の大綱:空母化で
東京新聞:空母化米機発着も+社説)専守の歯止めどこへ
産経新聞:防衛費5年27兆円+主張)空母化を評価する、


 さまざまな論に接しながら、自分の考えを持ちたいものだ。 


{2018/12/11-12/21読了、記入は12/22土曜}