読書録

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「愛国」という名の亡国論〜「日本人すごい」が日本をダメにする〜

「愛国」という名の亡国論 ―「日本人すごい」が日本をダメにする

「愛国」という名の亡国論 ―「日本人すごい」が日本をダメにする

 サッカーワールドカップで日本代表が活躍すれば嬉しく、テレビの視聴率にも如実に現れる、というのはどうしてもある。


 四季は日本しかなく、紅葉は世界一美しいなどというとなんとなく気持ちいいのだが、本書では、そもそもそのデータが間違っている、ということから始まって、こうした日本礼賛の動きは、実は明治維新後の列国に追いつこうといううごき、戦前の優生学などが背景にあると、資料をもとに指摘していく。さらに、NHK朝日新聞などの報道を詳細に分析して、ネットなどでは「反日」報道とたたかれているが、実は「愛国」報道との間でぶれている、ということを示していく。



発刊したさくら舎のサイト→ http://sakurasha.com/2017/11/



覚えておきたいポイントをいくつか引用して以下に
◽︎テレビの「愛国」をこじらせた「日本礼賛番組」の出現に、大きな影響を与えたのは、以下の3つの要因にあると考えています。p132
1 NHKが作り出した「世界一の〇〇」番組
2 2007年から始まった「愛国本」ブーム
3 サッカーワールドカップにおける日本代表応援キャンペーン


◽︎1920年代から30年代にかけて朝日新聞の「世界一報道」に大きな影響をあたえたであろう下村宏という人物p231
・日本人を西洋列強に負けない優秀な民族にしたいという愛国心のような印象をうけますが・・・根底に流れているのは当時欧州で支持を集めていた「優生学」でした。
・日本を負けない国にするには「人種改良」こそ国策にすべきという主張でした。
 →1943年には日本放送協会の会長にもなる


◽︎日本礼賛報道とは、反日報道のトレンドがあまりに強くなりすぎてしまった際にマスコミ自身が中立公正という企業理念を守るため、無意識につくりだしている逆トレンドである可能性が高いのです。p25


◽︎この本は、愛国マスコミが日本社会に及ぼす問題点をおもに指摘していますが、じつは本当に伝えたいのは、メディアリテラシーの重要性です。


◽︎サクセスストリーの定番として時論公論「戦後70年 日本経済の再生は」今井純子解説委員の解説から引用p81
「戦後、日本は、焼け野原から、高い技術力と、勤勉な国民性で、質の高い自動車や家電製品などをつくり、輸出して外貨を稼ぐ。こうした、外需主導の経済モデルで高い成長を遂げ、生活を豊かにしてきました。資源もないアジアの国が、1968年には、世界第2位の経済大国になり、80年代には『ジャパン・アズ・ナンバーワン』ともてはやされるほどになりました」
←事実を伝えていると思うのだが、本書では、これについても、世界第2位になったのは、ドイツを抜いたからで、人口が超え始めたからp82と指摘する、
→本書では、テレビの本性は感情を操る兵器で、《手柄横取り型世界一パターン》すなわち、素晴らしい技術をもった職員を登場させて外国人を驚かせ、日本の職人は世界一と結論づけるお約束があるp99




いろいろ論議がある内容とはいえ、メディアリテラシーをしっかり身につけて、何が事実かをきっちり見ていく重要性については、深く認識した。気をつけたい。




{2018/10/18-20読了、記入は10/27土曜}