読書録

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日本はなぜ世界で認められないのか

日本はなぜ世界で認められないのか (平凡社新書)

日本はなぜ世界で認められないのか (平凡社新書)

1970年生まれで元朝日新聞記者の著者は、真珠湾攻撃ミッドウェー海戦関連で、取材にあたった秘話を紹介しつつ、本筋としては、かつての戦争を自らの手で総括しなければ、世界で認められることはないと、タイトルの質問には答えているように思う。「新聞社で黙々と仕事を続けていれば、適当に地位も上がり、定年まで悪くない給料も入ってくるが、毎日同じことを繰り返していたのでは、ジャーナリストとして進歩がないのではないか」と思ったそうで、新しいソーシャルメディアへの評価と期待などとあいまって、既存メディアへの批判は厳しい。


(目次ー引用)
序章 「坂の上の雲」を超えて;
p18:日本の失敗の原因を突き詰めると、外の世界に目を閉ざして自己中心にふるまう日本人の姿に行きつく。日本人は広く世界の視点から日本人を見ることが少ないと思う。…活力を失い行き詰った日本を再構築するためには、外からの視点を導入して日本を再発見するこ必要がある、ということだ。日本人の国際感覚の欠如こそ、今日の日本の行き詰まりの最大の原因だと知るべきなのである。


第1章 海外メディアが映した“二度目の被曝”;
p40:政府が情報を隠蔽したとき、民主主義国で最も力を発揮するのはマスメディアである。…(原発事故で政府や東電と一体化して情報隠しに加担し、原発安全神話の増幅につとめていたというのでは話にならず)…日本のジャーナリズムは、今こそ、約七十年前の敗戦時と同じように、一から出直すべきである。…弱体化した既成の新聞やテレビに代わって、ツイッターフェイスブックやユーチューブといった新しい市民メディアが海外メディア情報を貪欲に吸収し、既成のジャーナリズムを凌駕する力量を発揮したことは、震災と原発事故の不幸中の収穫であり、日本人の知的な底力を見せた。


第2章 太平洋戦争は終わっていない―日米間に横たわる歴史のトラウマ;
1蘇るパールハーバーシンドローム
p54:記者クラブの最大の弊害は、自由なジャーナリズムに壁を作ることだ。内輪のジャーナリストが外部のジャーナリストの言論の自由に障壁を作っているのだ。
p86:実は、日本の戦争責任は連合国による東京裁判で裁かれてはいるが、日本人自身の手によって総括したことはない。このこてゃ、日本が国際的に認められない最大の原因になっている。


2南洋に放置された戦跡とミッドウェー海戦秘録;
p108:余計な付随物が多すぎる海軍組織を合理化、簡素化しないと、米国との長期戦にはとても勝てないと、書いている。…山本長官は大本営に対して、この辺で戦争を休止させ、真剣に和平への道を探るべきという提案を行っていたとの記述…
p114:過去を直視できないでいる国が、世界から尊敬されることはないのである。


第3章 遠くて近いアフリカ;
p154:既存のメディアによるコミュニケーションの独占の仕組みが独裁政治を生み出す基になっていることを考えれば、メディア革命を作ったジャスミン革命は、多様化する人類社会の新可児一抹の光をもたらした。


第4章 鯨はなぜ食べられなくなったか―反捕鯨運動の隠された背景;
p178:日本人いとって必要なのは、官僚が得意とする数字の羅列や情報の操作ではなく、イメージとしてのシンボルを作り出して積極的に海外発信するクリエイティブな仕事なのである。


第5章 北朝鮮拉致問題はなぜ解決できないのか;
p198:日本の外交能力が戦後のドイツほど高くないのは、戦争責任に関する日本国内での総括が不足しており、戦争の被害を受けた近隣諸国に対する説得力がない、と見られているのだ。
p200:北朝鮮内部の人権抑圧を告発する包囲網による国際世論の圧力こそが、拉致問題解決の最大の武器になるということだ。


第6章 日本はなぜ中国に抜かれたか;
(中国の企業「日本の大学卒は学力が落ちているのでウチでは採用していない、とまで言われる時代p116)
p228:日本がアジアで中国に拮抗する力量を備えることは、アジア諸国の平和と安定にとって最も重要な課題だ。


あとがき
(京都への原爆投下に反対した米国陸軍長官のスチムソンで、執拗に撤回を迫った)
(京都は日本人が自分の姿を映す鏡のような都市なのだと感じる)

{10/21-22読了、同日深夜記入}