読書録

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『米国発ブログ革命』 池尾伸一 著

米国発ブログ革命 ルポ (集英社新書)

米国発ブログ革命 ルポ (集英社新書)

今後のメディア状況をうかがう上で、とても興味深い報告になっている。
ブログに影響力があるのかないのか、日本ではまだ否定的な見解が多いように思うが、アメリカでの「ネットワーク・ジャーナリズム」へと向かうこの動きは、早晩、日本でも十分ありうる動きだろう。

最初の方で、ジェフ・ジャービス准教授の、メディア寡占化によって少数意見が反映されなくなり民主主義が危うくなる中で、ブログやネットを基盤として多様な意見が出てくることは良いこととする考え方と、キャス・サンステイン教授の、ブログでは自分が望む意見しか効かない傾向が強く民主主義が危うくなる心配があるという対比で議論の分かれることを示している。
ただ、個人発メディアの影響力の大きさについて、疑う余地はないとして論を進めている。
よって、ネットの「こだま」化の危うさをいかに乗り越え、よりよい道へ進んでいけるのか、考えていかなければならない。


(扉ー要旨)
アメリカでは、傘下にロサンゼルス・タイムズ等を持つトリビューン社破綻に象徴される既存メディアの危機とは対照的に、ブログや、ソーシャル・ネットワーキング・サービスといった「個人発」メディアが、政治の場において極めて強い影響力を行使するようになっている。
オバマの当選も、そうしたブロガーたちの存在がなければ決してあり得なかった。
本書は、新聞・TVなど既存のマスコミの基盤が揺れる中、数百年に一度のメディア大変動の動向を描きつつ、読者参加型メディアにおける最新の情報リテラシーについても考察した衝撃のルポルタージュである。


(目次ー引用)
第1章 台頭する「個人発」メディア
1ワシントンが恐れる男;→マルコスが立ち上げた「デイリー・コス」のオフ会に民主党大統領候補8人中7人が参加。

2「調査報道」の新旗手たち;→司法長官を辞任に追い込んだジョシュア・マーシャルのTPMトーキング・ポインツ・メモ/2004年ブッシュ兵役疑惑を報じたダン・ラザーを辞任に追い込んだリトル・グリーン・フットボール

3主婦が大スクープ;→ハフィントン・ポストに投稿したメイヒル・ファウラー(オバマ発言)

4壁を崩せーワシントン・メンと「博訊」ニュースの闘い;→ポシュン boxun.us/news/publish/
p86:李長青のことば「わたしはいま、真実をかたることだけがわたしたちを救うのだと確信しています。良心の声をこの国に行き渡らせ、嘘や虚偽をなくそうではありませんか」
p94:ヤフーの大罪

5「ハイパーローカル・メディア」の挑戦;→ネットを含めメディアの数は増えるのに記者は減る
p106:「公共のためになる報道を、ビジネスというより公共事業だと考えてみてはどうだろうか?」プレス・シンク

6「民主化」された映像と放送のパワー;


第2章 個人発メディアの課題
1六〇万人がだまされた;
p145:オバマ陣営は「中傷と戦う」というサイトを作り、ネットで広まる虚偽情報、誤報にいちいち細かく反論した。・・「窓口」を作り・・「口コミには口コミ」「ネットにはネット」で個別撃破しようという戦略だった。
p146:ジェフ・ジャービス准教授が示すウェブ上の3つの論理 「1.リンク 2.透明性 3.訂正」
p149:ダン・ギルモアの特別レクチャー「結局、情報の受け手である人々の、インターネット情報に対するメディア・リテラシーが重要になる」

2「『こだま』の部屋」か「タウンミーディング」か;
p154:シカゴ大キャス・サンステイン教授「ある特定の政治的意見を持った人々が、同種の意見を持った人たちのブログばかり読む傾向がある・・自分の声の『こだま』を聞くような状態・・自分の意見にさらに凝り固まり、異なる意見を持つ人々をバカにするようになる」「意見の対立をさらに先鋭化させるおそれがある」
p158:日本でも、例えば「2ちゃんねる」などでは、同種の意見を持つ人が集まって、意見をさらに過激に、攻撃的に先鋭化っせていく過程が観察できる。

第3章 のたうつ「恐竜」たち
1揺らぐ報道の独立と崩壊する取材態勢;

2「進化」への胎動;

3読者参加型メディアへの脱皮;
p215:米国のメディアは、これまでの一方通行メディアから、読者、視聴者が参加する双方向メディアに向けて歩み始めている、

第4章 つながるジャーナリズムへ
p225:注目されているコンセプト「ネットワーク・ジャーナリズム」は、チャーリー・ベケットやジェフ・ジャービスが、将来進むべき姿として提唱している考え方。
p228:一般の人々の役割は受け身から能動的なものに、報道機関やジャーナリストも、一方的な発信者としての役割よりも、モデレーター(司会者)やファシリテーター(進行役)として、人と人をつなげ、有益な情報を引き出し、分析する役割を果たすものへと変わっていく。
p233:米国発ブログ革命が主導する、世界的なメディアの地殻変動。わかっているのは、前進への努力を怠ったメディアは生き残れないということだけだ。

{図書館から借り9/17読了、記入は23}