読書録

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新聞・テレビは信頼を取り戻せるか

新聞・テレビは信頼を取り戻せるか (平凡社新書)

新聞・テレビは信頼を取り戻せるか (平凡社新書)

坂上遼のペンネームで数々のドキュメンタリーを世に問うてきた著者が、初めて実名を明かして書いた現場の課題と展望を俯瞰した本。扉にあるように、報道しなければ明らかにされることがない事実を独自の取材や調査によって、自社の責任において報道するのが「調査報道」であり、メディア不信が広がりつつあるなか、依存型報道からの脱却こそがジャーナリズムを救うと訴える。

また、記者クラブの課題や調査報道の定義など、豊富な事例を通して検証したうえで、終章で、3つの問題提起としてまとめている。p271〜
1.「依存型」報道からの脱却と「自立型」報道の確立→発表報道に頼らず調査報道を活用する
(発表に端を発しながらも独自の視点、取材でこれまで明らかにならなかった事実の発掘を含む)
2.ジャーナリズムが本来持つ権力監視機能(ウィッチ・ドック)としての「特別調査報道」の意義
3.「調査報道」がジャーナリズムを活性化させるという筆者の仮説を現場の取り組みから検証
そして最後に、「ジャーナリズム・リテラシー教育」の重要性を提起する。p277〜
(機能)1.情報伝達、2.権力監視、3.問題点の指摘、4.論点の提起、5.世論形成、6.記録

本著の中には、調査報道の障壁として、記者アンケートから10項目を抽出して、検証しているところがあるが、これらの問題は、なおも課題として残されていくのだろう。p227〜
1.取材現場のゆとりのなさ
2.指揮官たるデスクの調査報道に対するマインドの欠如
3.若い記者たちの取材力不足
4.取材ノウハウの継承の難しさ
5.記者クラブ中心の取材体制
6.個人情報の取材を阻む社会的傾向
7.メディアに厳しい司法の傾向
8.権力側の対抗措置
9.調査報道受け入れい体質の欠如
10.報道機関の経営難

経営難は、ネット時代にあって広告収入が漸減傾向にあるなかでさらに続く見通し。さらには、いずれの組織にもあるサラリーマン化など、なかなか難しい時代だと痛感する。

{4/12-17読了、記入は21}