読書録

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『NPOメディアが切り開くジャーナリズム−「パナマ文書」報道の真相』

NPOメディアが切り開くジャーナリズム 「パナマ文書」報道の真相

NPOメディアが切り開くジャーナリズム 「パナマ文書」報道の真相


 非営利の調査報道のNPOは、日本で成立するのかを、アメリカでの先進事例を紹介しながら調査/研究して、自ら立ち上げたことを紹介している。また、ICIJ国際調査報道ジャーナリスト連合パナマ文書パラダイス文書関連報道に関わったNHKでの経緯も明らかにしている。


 米の事例は、チャールズ・ルイスによるCPIセンター・フォー・パブリック・インテグリティ1989年設立について詳しく紹介している。インターネットの普及が活動を後押ししたp79とし、年間予算は10億円p83、常勤40人という。

 全米規模のプロパブリカは、2008年に資産家ハーバート・サンドラーの寄付1000万ドルを元に設立されたというp99。給与について代表が57万ドル、編集長が45万ドル、記者は16万ドルが最高額で平均7万ドル前後p100とのことだ。

 これらは規模が大きいため、報道対象を特化したユース・トゥデイ=YTという青少年問題を取り扱う団体の代表に対する一問一答形式のインタビューを掲載p107〜、記者4人の給与は4万〜6万ドルと紹介している。

 規約や体制、予算について詳しいのは、日本における可能性を探ったということなのかも知れないが、寄付文化が根付く欧米と、NPOといえば給与水準がおさえがちになる日本のケースで、どこまで理解が得られるのかが、課題かとも考える。


発刊した公益財団法人新聞通信調査会のサイト→ http://www.chosakai.gr.jp/publication/index.html
著者が編集長を務める「ニュースのタネ」のサイト→ https://seedsfornews.com/
「ニュースのタネ」フェイスブックのページ→ https://www.facebook.com/seedsfornews/


 第7章で日本での非営利報道の誕生と今後の展望としてp241〜
◇弁護士によるNPJ
◇ワセダクロニクル
◇アイ・アジア2013からニュースのタネ2017へ。寄付金は当初100万円規模から500万円へp248
◇政治資金センター2016、
◇ファクトチェックイニシアチブジャパン2017.6会見、10月の総選挙で本格的なファクトチェック始動p269


 最終の8章ではチャールズルイスとのインタビューが紹介されているが、ここから一言引用
p273:社会は多様化し、常に変容している。それに対応する新たな動きとしては、ジャーナリズムがジャーナリストのみによって行われるという状況そのものが、変わる必要があるのかもしれない。

 また、「青少年の問題など人々の生活に根差した“女の子のニュース”を軽視して、安全保障などの“男の子のニュース”ばかりを追いかけ、読者や視聴率を失うというp276YTのフリッツ代表の指摘を紹介しているが、この点は、林香里教授の新たなジャーナリズム論を思い起こした。
 ジャーナリストの協働の必要性p286についても、いまの時代、どういうあり方があるのか、著者の今後をじっくり見ていきたい。


{2018/9/11-17読了、記入は24}