読書録

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テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス 13局男女30人の聞き取り調査から

テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から

テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から


 働き方改革が大きなテーマになっているなか、5年前に出版された本書では、報道職の厳しい実情が聞き取り調査でよく現れている。メディアをめぐるさまざまな研究があるが、こうした現場を浮かび上がらせた内容は珍しいように思う。


 また、NHKの女性記者が亡くなり労災認定されたこと( https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/pdf/20171004.pdf )が去年(2017年)10月4日に公表され、長時間労働の抑止と再発防止が取り組まれるようになったが、本著のタイトルにあるように、アンバランスな実態というのは、これまでも認識されていたということではあると思う。


 こうした労働実態の中で、「ケア役割をも担う者が不利にならない多様なキャリア形成の在り方を、社会的影響力のあるテレビの報道職が手に入れることこそが、報道の質に変化をもたらすきっかけとなるのではないだろうか。それがひいては日本社会全体のワークライフバランスが変わることに、結果としてつながっていくに違いにないp159」というのは、まさにいま求められていることだろう。


 本書では、研究者だけでなく、かつてメディアに身をおいた元記者やディレクターも登場して、「出世志向、管理職志向が弱く、ジャーナリズムの現場でジャーナリストとして仕事を続けることに矜持をもってきた女性たちにとって、管理職のポストや取り組みはどれだけ魅力を持つだろうかp145」という一般的な傾向を紹介しつつ、記者を志す女性たちに「子育ては一時、楽しみは生涯、こんな遣り甲斐のある職業はめったにない」p179というメッセージを送っている。



発刊した大月書店のサイト⇒ http://www.otsukishoten.co.jp/book/b146198.html



 また、会社の経営方針など上手に出来るエリートが増えてきて不安を感じる(p119)というのも、わかる気がする。さらに求められる素養として、「一般にジャーナリズムの役割としてよく言われることは、権力の監視、国民・市民の知る権利への奉仕、構成と正義の実現、弱者の訴えの代弁・・などがある。それらすべてに通底する理念は人権である・・記者は自分自身が人権感覚をもつとともに、取材対象、特に公人の発することがの安価の人権感覚に敏感であってほしい・・同時に歴史観が必要だと思うp227」という観点は、こころにとめておきたい。

 また、今後の方向性について、地域とネット関連で以下を引用。
◇地域に当事者情報を伝えるローカル局の役割の重要性は今後ますます認識されていくであろうし、地域住民からも期待が高まるだろう。とりわけ災害などの非常時にはローカル局の役割はきわめて重要であるp210
◇若者がネットに移行しているのは、目新しいだけでなく、権威的でなく若者を疎外しないものが多いからp231


 国会では、働き方改革法案の裁量労働制をめぐって、基礎データに誤りがあったことをうけ、激しい論戦が続いている。どう考えたらよいのか、注目していきたい。


{2018/2/9-14読了、記入は24日}