読書録

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『上級国民/下級国民』橘玲 著+『〈格差〉と〈階級〉の戦後史』橋本健二 著

  さまざまな論考が引用され、米大統領選でも顕在化した現代の分断の背景について、なるほどと理解させてくれる面がある一方で、そこまで断言できるのはなぜか、については、何事もハーフトゥルースという原則で、より深く情報を集めないといけないとも感じた。ベストセラーになった「言ってはいけない」については、読んでいなかったので、これを機会に、あわせて読んでおきたい。

上級国民/下級国民(小学館新書)

上級国民/下級国民(小学館新書)

  • 作者:橘玲
  • 発売日: 2019/08/01
  • メディア: Kindle
 

 発刊した小学館新書のサイト↓

www.shogakukan.co.jp

本書からいくつか以下に引用。今後の検証も必要かも知れない

p8:(同じ現象の背景)私たちが、「知識社会化・リベラル化・グローバル化」という巨大な潮流のなかにいるからです。その結果、世界が総体としてはゆたかになり、ひとびとが全体としては幸福になるのとはひきかえに、先進国のマジョリティが「上級国民/下級国民」へと分断されていきます。=p185:先進国の中間層が崩壊した⇒p214:主流派の分断が進むのは、(知識社会化(再掲)・・の強大な圧力を受け)そこから膨大な数の人たちがこぼれ落ちていくから

 

p30:平成日本の労働市場では、若者の雇用を破壊することで、中高年の雇用が守られた

p43:(米ではIT導入でアウトソーシング効率化&ソフトウエアに対応したが、日本では雇用対策優先でソフトウエアを会社に対応させるため高価なカスタムに)日本では、IT導入が組織の合理化や労働者の技術形成をもたらさず、割高な導入コストや、異なったソフトウエアを導入した企業間の情報交換の停滞も相まって、生産性の停滞を引き起こしたというのです。 (深尾京司 失われた20年と日本経済構造的原因と再生への原動力の解明)

 

p59:オランダの「平等」で「リベラル」な雇用制度が日本で紹介されないのは、日本社会の主流派が「正社員」で、マスコミ記者の大半が「正社員」だからでしょう・・・身分の違いがなくなり、既得権が否定されるから

p66:マスコミも含め日本の企業や官庁、労働組合などを支配しているのは、「日本人、男性の中高年、有名大学卒、正社員」という属性をもつおっさんで正規メンバー・・・「外国人、女性、若者、非大卒、非正規」のようなマイノリティの権利などはどうなってもいいのです。

p85:現代日本社会において、「下流」の大半は高卒・高校中退の「軽学歴」層なのです

 

p184:複雑系は世界の根本原理なので例外はなく、資産にもあてはまり・・・格差は拡大していきます。

 

p203:アメリカ社会の構図(図表)
・サイバーリバタリアン:トランプ支持p207ピーター・ティール『ゼロ/トゥ・ワン』
×リベラル(白人):上級国民
・黒人保守派
・マイノリティ(黒人・ヒスパニック)
×プアホワイト(オルタナ右派):下級国民 ⇒分断:トランプ支持者の岩盤

 

p212:木村忠正(文化人類学者)氏とヤフーニュースのコメント分析
⇒理不尽な感覚と正義感、マスコミへの批判的態度で「気持ち悪さ」表出で5つにまとめている
①韓国、中国に対する怒り
②被害者が不利益を被ること(加害者が権利保護)への憤り
③近隣諸国を外集団とし「日本」にアイデンティティを求め、内集団意識を明確化、強化したいという強いベクトル
④社会的規範を尊重しないことへの憤り
⑤マスコミに対する批判
⇒p214:内集団、権威、公正(因果応報)の道徳的基盤が強く働き、「非マイノリティポリティクス」と名付ける+LGBTや沖縄など少数派への批判的視線・非寛容で、マイノリティの人権についての主張を「弱者利権」「被害者ビジネス」とみなし、権利や賠償を勝ち取る行為としてとらえる=マジョリティのアンダークラスのことで、下級国民意識を持つのは当然

p215~7:デイヴィッド・グッドハート(英ジャーナリスト)による2つの階層の族⇒「知能によって分断」
△エニウェア族(新上流階級):進歩的な価値観で成果主義能力主義に対応/グローバル化に賛成し移民受け入れや同性婚にも寛容=リバタニア、
▽サムウェア族(新下流階級):中高卒で地元で就職/地域社会の秩序を重視し宗教や伝統的な権威を慎重=ドメスティクス

⇒p219:リベラル化する世界の分断:リベラルvsアイデンティティ主義者

p223:ポピュリズムとは、下級国民による知識社会への抵抗運動

p225:(マルチチュードや左派に希望はなく残されたのは)テクノロジーによる設計主義だけだと考える。

p228~9:ベーシックインカムは、「排外主義国家」になるほかなく危惧:貧しい人々の「経済合理的」なお行動によって、裕福な国では確実に破綻する

p232:あらゆる現象の根源にあるのは産業革命から始まった「知識社会化」

で、経済格差は知能の格差⇒指数関数的な性能向上で知識社会は終わる

<あとがき>p235~
・知識社会化など巨大な潮流の中で、「よりゆたかに、より自分らしく、より自由に、より幸福に」の同じ目標を共有することで、世界中似てきた

・今後のトレンドは大きく2つに分かれる
1)エンジニアやデータサイエンティストなどテック業界で専門職が高給に
2)FBなどで多くのフォロワーを集める「評判資本」をマネタイズ

⇒最先端の技術を理解してわかりやすく説明する、新商品やサービスなど新しい情報をSNSで発信する、といったスキルでもそれなりの収入を得られるようになり、「知識経済」と「評判経済」は一体となって進化

 

 あわせて、格差関係では、以下も読む。膨大なデータをもとに、歴史をふりかえりながら綿密な分析が行われていた。 

〈格差〉と〈階級〉の戦後史 (河出新書)

〈格差〉と〈階級〉の戦後史 (河出新書)

  • 作者:橋本健二
  • 発売日: 2020/01/25
  • メディア: 新書
 

いくつか引用してメモ↓

p52:SSM調査データ:社会階層と社会移動全国調査 尾高邦雄1955~を基本に

p86~時期区分の説明

1)戦争直後の5年間、2)1950年代、3)60年代:格差縮小に、4)70年代:一億総中流、5)80年代、6)90年代~格差拡大の時代に突入

p290:(1999年経済戦略会議が日本社会を過度に平等だと決めつけ、格差拡大の方向に誘導)

p327:2006年、「格差社会」が新語流行語大賞のトップテンに選ばれる

p368:アンダークラスを生み出し拡大させてきたこと、1980年代から始まった日本の格差拡大過程がもたらした、最大かつ最悪の結果だといってよい。…日本経済は根本的に変質してしまったようである

 

 発刊した河出書房新社のサイト↓

www.kawade.co.jp

 1スレッドに1冊を基本としていたが、土曜の夜、なかなか書く時間的余裕がないため、2冊まとめてアップする。格差関係を続けて読むと、米大統領選挙におけるトランプ大統領の動きなどがわかるとともに、将来どう考えたら良いのか・・・悩ましい。

 

{2020/11/5-10+11-13読了、記入は11/14(土)+15(日)追記}