読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

ブレイズメス1990

ブレイズメス1990

ブレイズメス1990

久しぶりの海堂さんの作品。いつものスピード感と登場人物の面白さで一気に読め、楽しめる。

今回の登場人物のうち、モンテカルロ・ハートセンターから東城大学に招かれる天城雪彦部長とスリジエ・ハートセンターの今後については、その後、それらしい話を読んだ覚えがなかったので、この本で完結しなかったということは、続編に期待するということか。

それにしても、天城部長に語らせる思想は、シッコなどでも描かれてきたアメリカの医療制度を思い出させ、いろいろ考えさせられる。
p83:「セ・ラ・ヴィ、それが人生だ。人生は平等ではなく、不公平なもの。だからこそ人生は残酷で、だからこそベル・ヴィ、人生はかくも美しいのさ」
p94:「私が患者を助ける理由は、カネを戴けるからだ。命と同じぐらい大切なカネを、ね」
p208:「今、官僚たちは着々と市場原理に基づく医療に舵を切り始め、その波が医療現場に襲いかかり始めている。」
シャンス・サンプルという賭けで、ダイレクト・アナストモーシスという高度な術式を行うかどうかを決め、相手に全財産の半額を出させるという設定も、その後の公開手術に至る展開として、大きな仕掛けになっていて、実生活の他でも何か応用できそうな気がする。

黄金地球儀をめぐる騒動を引用しながら(p223)、行政への批判を伏線として忘れないところに、一貫した問題意識を伺える。

また、ボンクラボヤやウスボンヤリボヤなどが幕間に入り、他の作品を思い起こさせるサービスが随所に盛り込まれている。さらには、バチスタでは貫禄のある高階病院長が跳ねっ返りの小天狗といわれた講師として、また、看護婦の藤原婦長、猫田、花房と、なつかしい人たちも、その横顔を見せてくれた。

登場人物の年表なり、解説本があったら、手にとって見たくなるかも…。

{4/30〜5/3読了、記入は5/6}