読書録

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分断社会ニッポン 朝日新書 580

分断社会ニッポン (朝日新書)

分断社会ニッポン (朝日新書)

 トランプ米大統領の誕生によって、「分断社会」という言葉が、極めて現実味を帯びてきているが、本著では、国内におけるその危険性や、終わらせて社会を強化するためのポイントなどについて提言をまとめて提示している。
 著者3人による対談形式で、その一人が民進党の政治家であり、本著は「基本政策の叩き台になるようなテキスト」として準備しておこうと企画されたようで(p215)、いま何が問題になっているのかについて気付くこともできるが、政治色が出ている部分もある。
 なお、佐藤優氏が、幅広い見識と分析視角をもつことについては、著作の数の多さも含めて感嘆する。


発刊した朝日新聞出版のサイト→ http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18402


 本著の最後の方に、議論の重要なポイントをリスト化した「分断社会を終わらせる15のポイント」が掲載されいてるが(p188-189)、その一部を以下に印象して、備忘録としたい。
1)同一価値労働・同一賃金を柱とする雇用格差・賃金格差の是正
2)賃金カーブの是正、男女がともに働ける社会の基盤整備
6)消費税10%増税時のサービス拡充、受益感のいっそうの強化
12)「行革のための行革」から、「必要を満たすための行革」へ
14)経済成長を目的にせず、生活保障の結果に変える

→佐藤氏のコメントから
・分断社会を克服すること、財源論から逃げないこと、成長を目的としないこと、この三本柱を重視してここまで議論(p171)してきて、イデオロギッシュにしてはいけないことが大事
・我々が生き残る、我々の日本を守って、日本を警鐘しないといいけない。ジェンダーによる差別を克服して、一人ひとりが幸福にならなければいけない。そこを明確にしたうえで、正規・非正規、若者の雇用、結婚・出産、育児・子育て、教育・介護を総合パッケージとして提示する(p185)


◇具体例のメモ
ワークシェアリング的モデルで、JR東労組、日本原燃創価学会の専従職員など中間団体、p41
・医療法人「博仁会」(茨城県常陸大宮市)で育休産休の取得率が100%、p42
・『世俗都市』(1965年、ハーヴィ・コックス著)でアソシエーション論の基礎p52


◇佐藤氏は、最後に、『分断社会を終わらせる ─「だれもが受益者」という財政戦略』(井手 英策 古市 将人 宮崎 雅人 共著)から、問題意識として引用している部分がある。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016331/
・等しい取扱い・承認欲求を理念によって満たすには、愛国心や倫理・道徳で理念共有か、地域共同体で主体的に公正な分配で理念を共有するかの二つ(p216)・・・利害や価値を分かち合わなければ社会は成り立たない


 トランプ米大統領が次々打ち出す政策で、これを書いている2/5のトップニュースは、「7か国の人の入国を一時的に禁止することなどを命じた大統領令に、連邦地方裁判所が即時停止を命じる仮処分の決定」したことをめぐる動向だが、米国内ではこの大統領令を支持している方が上回るという報道もあり、今後の行方がますます不透明になってきている。



{2017/1/23-28読了、記入は2/5}