読書録

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『小学館新書 無理ゲー社会』 橘 玲 著

選んだ理由)いまの生きにくい社会の背景を知りたい
感動した理由) 引用など根拠を示し、トランプ元大統領や陰謀論に一定の支持があることの背景などが少しわかった。

 発刊した小学館のサイトに詳細目次あり↓

感動した箇所)ラストの総括を引用
p282:世界は「「リベラル化、知識社会化、グローバル化」の巨大な潮流のなかにあると、私は繰り返し述べてきた。資本主義は、「自分らしく生きたい」「より幸せに(ゆたかに)なりたい」という夢を効率的にかなえる経済制度としてまたたくまに世界じゅうに広がった。その資本主義が木ある種の機能不全を起こしているのは確かだろう。

p283:ひとびとが「自分らしく」生きたいと思い、ばらばらになっていけば、あちこちで利害が衝突し、社会はとてつもなく複雑になっていく。これによって政治は渋滞し、利害調整で行政システムが巨大化し、ひとびとを抑圧する。
(ヒトの認知能力には限りがあるので・・複雑なまま理解できず・・邪悪なものが支配・・陰謀思考の標的、右派では「ディープステイト」左派では「資本主義」が最近の流行)

p284:この状況で「絶望するな」というのは難しいだろう。それにもかかわらず、きらびやかな世界のなかで、「社会的・経済的に成功し、評判と性愛を獲得する」という困難なゲーム(無理ゲー)を、たった一人で攻略しなければならない。これが「自分らしく生きる」リベラルな社会のルールだ。
わたしたちは、なんとかしてこの「残酷な世界」を生き延びていくほかはない。
 
発見したこと)
先に読んだサンデル氏の本への違和感が、この著者の一言で分かった気がする。
p97:サンデルは、知識社会から脱落し見捨てられたひとびとの「労働の尊厳」をかいふくするために「低賃金労働者への賃金補助」を行ったり、その財源として給与税(社会保障費)を引き下げるか撤廃し、代わりに消費、資産、金融取引に課税する案を紹介している。だが、翻訳で300ページにわたって、メリトクラシーを道徳に結びつけることの過ちを縦横無尽に論じておきながら、最後の10ページほどであたふたとこのような「解決策」が出てくることに拍子抜けするひとも多いだろう。
 
p98:「われわれはどれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない」とサンデルは説く。そして、自分の運命が偶然の産物(遺伝ガチャのあたり)であることを身に染みて感じれば、「ある種の謙虚さ」が生まれ、わたしたちを「能力の専制を超えて、怨嗟の少ない、より寛容な公共生活へと向かわせてくれる」のだという。こうしていつものように、「共通善」を達成するために熟議が必要だという話に(予定調和的に)着地する。
自分への影響)
 これを書いている土日の情報番組でも取り上げられているのは、アメリカで起きた銃乱射事件とトランプ大統領の対応で、本著でも取り上げられていた秋葉原事件の背景をふくめ、この分断の構造は、どうおさまっていくのか・・・よりよい方向をどう考えれば良いのか、さらに見つめていきたい。
2022/05/29
 
TBSテレビ 【サンデーモーニング】 

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{2022/5/1日-16月:読了、記入は29日10:40}