読書録

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『漂流日本左翼史 理想なき左派の混迷1972-2022』 池上 彰 佐藤 優 共著 

講談社現代新書のシリーズで3冊目、2022.7 発刊 サイトに目次あり
図書館サイト掲載の要旨)労働組合の攻防、衰退する社会党国鉄解体の衝撃。もう左翼は存在感を取り戻せないのか。左派の未来の可能性を問う。
 
覚えておきたいことなど、以下に引用メモ
p14:佐藤)格差や貧困、戦争の危機、私たちが直面しているこれらの問題は、まさに左翼が掲げてきた論点そのものです。激動の時代を生き抜くためには、左翼の功罪を歴史的に検証して危機を乗り越えるための「左翼の思考」から学ばなければならない-。それが、「左翼史」シリーズで一貫して掲げている問題意識でした。
 
p15:戦後の日本では、マルクス主義が人々の不満を吸収して社会変革を夢見るイデオロギーとして、広汎な支持を集めました。
 
川口大三郎事件 1972年11月8日早稲田大学 村上春樹海辺のカフカ』、松井今朝子『師父の遺言』で言及(p31)、反革マルで文学部自治会の樋田毅委員長が『彼は早稲田で死んだ』
 
・「虹作戦」1974年8月14日に予定、2週間後に三菱重工爆破事件 『パルチザン伝説』桐山襲著 単行本化中止が死後の2017年に河出書房新社から
 
池上彰氏の1年先輩松江で東大学生時代に山谷に潜り込んで日雇い労働者をオルグ(p44)
 
吉本隆明が左翼に与えた影響p46
→国家や法律、企業といった社会の公的な関係、つまりマルクス主義的な上部構造は詩や文学と同じく単なる虚構であり、共同の幻想であると考えた・・国家と個人の関係を見つめ直した・・共同幻想論
 
佐藤p114:浅田彰さんの『構造と力』(勁草書房)1983年、社会主義のような「大きな物語」が終焉した現代では、「小さな差異(前進)」こそ大事なのだという、この本が発したメッセージによって、伝統的な左翼思想は・・・無意味なものに一度はなってしまいました。
 
社会党の弱体化と「江田三郎の追放」p114
 
p152:佐藤)(ヨーロッパの社会民主主義政党は)「高負担&高福祉」、社会党の主張は「低負担&高福祉」でしたから
 
p158:佐藤)日本共産党ソ連崩壊後に組織保全、拡張をひたすら頑張ってきたおかげで生き残りには成功したものの、そのすると今度は、革命が重荷になってきてしまったというのが現在の彼らの本音だと思います。しかし、革命という看板を外すこともできない。そこで彼らはいま苦労しているわけですよ。
 
p177:佐藤)ウクライナ戦争に対して「あらゆる戦争に反対する」という声明を出すことができず、逆にこのような組織防衛戦争の論理を打ち出し始めたということは、日本の左翼がもはや戦争の論理に完全に搦め捕られたということを意味しています。
 
p182:佐藤)左翼思想を成り立たせる土台自体が崩壊している。
 
p184:佐藤)共産党は、議会を通じた平和革命と平和主義というかつての社会党の路線を密輸入することで生き残りを図っているが、前衛思想と民主集中制の頸木から逃れることができずに行き詰まっているというのが本書の分析だ。

 

民主集中制」をめぐっては、動きがあって、ニュースにもなっている。

共産 委員長選ぶ「党首選挙」実施主張した党員 除名処分に
2023年2月6日 22時10分 NHKNEWSWEBより

共産党の委員長を、すべての党員による投票で選出すべきだと主張した元党職員の男性について、共産党は、党が異論を許さないかのように事実をゆがめて攻撃し、規約に違反したとして、除名処分にしました。

 格差や分断が広がるなかでも、これまでたどってきた思想をめぐる教訓は、よくよく考えておかないといけない。
 
 
{2023/1/12木-18水:読了、記入は2/7火22:40}