読書録

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『デジタル・デモクラシーがやってくる!』 谷口将紀&宍戸常寿 著

  政治学憲法学の専門家が、デジタル化に伴うデモクラシーの課題について、対談のスタイルでとても軽やかにわかりやすく伝えている。各章ごとに「ポイント」が最後にまとめられ、頭に入りやすいスタイルで、政治分野でこうした本に接するのは珍しい印象があるが、著者たちの読み手にこだわる姿勢を感じた。

 発刊した中央公論新社のサイト↓

www.chuko.co.jp

書評にもいくつか取り上げられていた↓

 

覚えておきたいノウハウなど、以下引用

<古田大輔BuzzFeed Japan創刊編集長:3つの戦略>

p39:①コンテンツ戦略、4つの切り口)1)読者のアイデンティティに近く、2)エモーショナルな部分に影響する、3)ナレッジ、知識を与える、発見がある、4)アスピレーション自分でもできそうやってみたいとあこがれを持たせる、の4つが重要

p42:②ディストリビューション戦略(プラットフォーム、世界ではFB、日本では有チューブやツイッター、③エンゲージメント戦略(シェアやコメント、世界に比べて4分の1)

 

 <小口日出彦パースペクティブ・メディア代表取締役自民党の情報戦略>

p71:NHKと民放の朝の報道番組の内容を、全部テキストデータに分解:映像に含まれる要素をすべてテキストデータとして書き出す、時系列に沿って集計してトピックス

p75:ホットリンクという会社が、ブログや掲示板の書き込みなどメタデータの分析

p90:ヒット現象を予測する数理モデルを作る、鳥取大の石井晃教授、選挙予測可能性探る

 <第四次産業革命を政治に実装するための2つの山>

(日経書評記事より→)政治のIT活用には、2つのハードルがあると指摘する。通信の安全に関する「技術的課題」、そして民主的な手続きの正当性をめぐる「根源的課題」だ。先例主義を重んじて変化を嫌う与野党の議員の多くは、この両者を盾として多くの改革に背を向けてきた。
国会中継はネットで手軽に見られるようになったが、ペーパーレス化すら満足に進まない政治の現状に暗然とする。新型コロナウイルスへの対応をめぐって、政策決定の遅さや行政手続きの煩雑さが批判を浴びている。ネット政治の課題と可能性を知ることは、日本社会の将来を考える一助に 
 
p242:シシド)複数政党制とメディアの多元性が、リベラル・デモクラシーの礎石だといわれてきたのですが、メディアの経営基盤と質の高い競争が強化されるような取り組みが望まれます。
p250:谷口)第四次産業革命がもたらす社会に適合した民主政治というものに作りなおすには、原理原則まで遡ってゼロベースで考えることが必要だといえます。

 ネットの暗い面だけでなく、可能性にも光をあてながら、将来の構想を考えていこうという意欲的な一冊で、3月10日に発刊。その後、新型コロナウイルスの感染拡大で、デジタル化の遅れが顕著にわかったなかで、制度変更にむけ、知恵を絞っていくことが求められていると実感する。


{2020/8/27-31読了、記入は09/13(日)}