読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

『支配の構造 国家とメディア――世論はいかに操られるか』 堤 未果 中島 岳志 大澤 真幸 高橋 源一郎 共著

 

  Eテレの100分deメディア論のメンバーが再結集して、SBクリエイティブから発刊された本著も、いまのメディア状況を鋭く分析している部分があり、面白い。発刊社のサイトには、目次と概要が紹介されていてわかりやすい。かつ、下記のような引用できちんとポイントが表示されるのもさすがSB。読書メーターとも連動していた。↓

www.sbcr.jp

 今回紹介されているのは、以下4冊で、「はじめに」より抜粋引用

第1章では私(堤未果)が、ピューリッツァー賞受賞者であるデイヴィッド・ハルバースタムの『メディアの権力』から、アメリカンジャーナリズム最盛期の象徴的事件「ペンタゴン・ペーパーズ(ベトナム戦争に関わる政府機密文書)」の章を取り上げる。(中略)

第2章では、中島岳志氏が、数あるデモクラシー論の主柱であり大統領演説などにも引用されるトクヴィルの著、『アメリカのデモクラシー』を紹介し、現代の民主主義と、それをつなぎとめるために必要なものとは何かを考えてゆく。

第3章では大澤真幸氏が、「ナショナリズムの歴史的な起源」を説いた
『想像の共同体』(ベネディクト・アンダーソン)を解説する。今勢力を増している「ナショナリズム」とは何か?について考察し、デジタルが国境を消してゆく現代社会の中で、メディアが犯しがちな誤りとは何かについて議論する。

第4章で高橋源一郎氏が取り上げるのは、本の所持や読書が禁じられた架空社会を描いた70年代のSF小説、『華氏451度』(レイ・ブラッドベリ)だ。(以下略)

 

 元になった2018年3月の番組と書籍化された内容は以下↓ギャラクシー賞を受賞した。

www.nhk.or.jp

www.nhk-book.co.jp

 

 師走で余裕がなく、印象に残ったポイントを以下引用。

p57:中島:「忖度」とは何かを考えるときに、私はフーコーのいうパノプティコン(全展望監視システム)についての議論が重要・・(中略)・・権力の作用というのは、その「まなざしの内面化」によって最大化されるということ

p108:堤:本来のジャーナリズムの役割は、報道によって社会の中に情報の多様性をもたらすことだったはずです。

p123:大澤:「プリントキャピタリズム(出版資本主義)」という概念とは、「資本主義的なタイプの生産関係」と「印刷や出版といったコミュニケーション技術」、「人間が宿命的にもつ言語的な多様性」の三つの相互作用によって、近代・ヨーロッパにおいてナショナリズムが誕生し爆発的に流行したという

p221:高橋:『華氏451度』で、さまざまなものがどんどん『単純化』されて人々の思考力を奪っていくという話・・(中略:商業メディアは視聴率や売上で分かりやすさを最優先しがち)・・文化はある種の「分かりにくさ」が不可欠

p228:堤:(国営放送になってはだめで)公共放送として、国民の「知る権利」という公益に奉仕してゆかなければならない・・(中略:条件とは)財源と編集権の独立、少数派目線の番組とサービス提供、普遍的テーマ、調査報道、権力からの距離、質の高い教養番組、視聴率競争の圏外にいること、の七つ・・

+231:公共放送という守るべき存在に、また一つ日本国民が、世界が気づいていく。それができれば、社会はまた一歩、善き方向へ変わっていくのではないでしょうか。

{2019/12/24-28読了、記入は12/28(土)}