読書録

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「女性活躍」に翻弄される人びと

「女性活躍」に翻弄される人びと (光文社新書)

「女性活躍」に翻弄される人びと (光文社新書)

 最長で15年にわたって継続的に取材してきた女性たちの人生や心の変容を定点観測したルポで、タテマエの掛け声とは別に、悲しい現実があり、考えさせられる内容。先週(10月上旬)立寄った八重洲のブックセンターで、新書ランキング4位になっていたので、共感を呼んでいるのかもしれない。

 
◇印象に残ったケースとフレーズをいくつか引用

p30:課長昇進を断った佐藤さん「『産め』『働け』『活躍しろ』って、無茶な三重の役割を押し付けられて冗談じゃない!とても腹が立ちました」

p90:41歳で独身、派遣で母介護の森山さん「『(非正規で)ろくな仕事もしていない』『結婚もしていない』『子どももいない』くせにってー、世間から批判されているようで、ほんまに嫌です」『女性活躍』の裏返し、その基準から外れているのが私でしょ・・」

p156:30代で管理職ながら結婚退職で専業主婦の大下さん「ステータスのある男性と結婚して、専業主婦になって経済的に余裕のある暮らしを送ることができて、てっきり“勝った”つもりでいたのが、仕事を家庭を両立する女性がもてはやされるような時代になって、実は“負けていた”ってことなんじゃ、ないかしら・・とても悔しいですけれど、それが事実ですもの」



発刊した光文社のサイト⇒ https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334043407



 著者の本は2冊目で 2016-02-02 『男性漂流』http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/mobile?date=20160202 の記録が、この読書録にあり。

 
◇概念として「ウルストンクラフトのジレンマ」を備忘録としてp236-237
・『女性の権利の擁護』(1792年)フェミニズムの古典的名著で英国の社会思想家メアリ・ウルストンクラフトが論じた概念。
・女性と男性と全く同じ存在と認めてしまうと、家事育児介護などケア役割を担う差異をないがしろにして、表面的な平等を求めることになる。この結果女性は私的領域で負担が影響し職場など公的領域で低評価に。
・ケア役割を差異と捉えると、公的な領域で平等に扱うことができないことになってしまう。
・このジレンマが、いまも根強く女性たちを苦しめている。
 

 著者の考えは「p268:女性達一人ひとりが自らが望む道を歩み、そのライフスタイルを尊重できる社会、すなわち女性の生き方の多様性を受容できる社会が実現してこし、真に女性が輝く社会といえるのではないだろうか。そして、時代とともに働き方や家族形態も多様化するなか、政策形成においても、より多角的な視点が求められているのだ」として、例にあげてきた、管理職につくことだけが活躍ではなく、勤務時間や場所に制限を加えても子育てや介護に心の張り合いを感じている女性や、非正規ながら人の役に立つ仕事に働く意義を抱いたり、専業主婦として輝ける場所を見つけたり、十人十色なのだと訴えている。
 そして最後のあとがきで、杉村春子さんの代表作である文学座女の一生』から、主人公けいこのセリフとして「誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩きだした道ですもの。間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ」p271を引用し、未婚で子どもがいないp272著者も悩みを抱えつつ、苦しみに寄り添わなければならないと決意を表明している。


 なお、10月2日に発足した第4次安倍改造内閣で、女性の閣僚は片山さつき氏1人のみ初入閣。
2018.10.02 13:41 https://abematimes.com/posts/4967523 のリンク先閣僚名簿発表を記録しておく。


 
{2018/9/28-10/8読了、記入は10/13土}