読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

結婚と家族のこれから共働き社会の限界

結婚と家族のこれから 共働き社会の限界 (光文社新書)

結婚と家族のこれから 共働き社会の限界 (光文社新書)

 家族の領域が、かつては仕事の場から、やがて分離し、いま再び曖昧になりつつあるという歴史を振り返りながら、結婚と家族の未来の形を考察した内容で、いまの共働きが増えても、同類の人どうしが結婚する「同類婚」p174の社会では格差が広がり、WLBでさらに格差が促進されるという問題など提起している。

 今後の結婚と家族を考える上で、まず「男性のみならず女性も雇用を通じて経済的に自立して、自由に人間関係を作る」ためには、1)安定した雇用が男女に行きわたり、2)家事や育児のサービスが何らかの形で提供され、3)高齢者が少なく、支えるコストが小さい、という3つの条件が必要だというp95。

 そして共働き化する社会において、家事や育児・介護などケア労働を担っていくには、アメリカのように国内外の所得格差を利用して使用人を雇用するか、北欧のように公的雇用を増やすかで、著者は、アメリカ型のナニーによるグローバル・ケア・チェーンは望ましいと言えるか疑問として、「弊害が少ないのは北欧社会のモデルではないか」と提言する。

 また、結婚生活といった私的領域での女性差別を撤廃するため公正さを徹底させることについては非現実的であるとし、「p252:公的な世界において基本的なライフ・チャンスを公平にし、家族がなくても生存できるような社会を作りあげることができれば、感情の不公正が生存の不公正に結びつくような前近代的な状況は緩和されるでしょう」という見解を示している。


出版した光文社のサイトに目次(章)あり⇒ http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039271


 いくつか備忘録として引用して以下に
◇家事分担の差は、時間が多い方、経済力が少ない方という要因説明はあまり日本ではあまり該当性がなくp103、夫婦が同じ条件で働いていても10時間も妻が家事をしている実態がある。⇒「そんなもんだよな」と人々が考えているからp105=イデオロギー仮説+役割意識やアイデンティティに絡むp106
◇p210:家族の負担を減らすこと、つまりある意味での家族主義から脱することによって、人々は家族を形成できるようになるのです。「家族を大事に」というのならば、家族から負担を減らして、家族の良いところだけを楽しめるような社会をめざすべきでしょう。
◇不貞の理論:アメリカの社会学的な研究で3つの要因:1)不貞に寛容な個人的価値観、2)不貞の機会(出会いや接触が多い)、3)パートナーとの関係(不満) 
◇家族の不平等体制の時代に、私的領域の公正さをどこまで?親密性が家族など「特別扱い」=長期的な関係を通じてパーソナルな配慮をしていくが、リベラリズムの公的社会の公正・公平性さと私的領域は分離する原理(公私の二元論←フェミニズムの論客が批判)の中で、難しい課題・・・「自由な親密性が行きつく先は、決して平等な世界ではないのですp247(結語)」


{2016/9/6-11,30読了、記入は10/01}