読書録

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巨大企業は税金から逃げ切れるか? パナマ文書以後の国際租税回避 光文社新書 877

 パナマ文書については、知っているようで知らなかった情報が、この新書にはたくさん盛り込まれており、とても面白かった。
 さらに、ビットコインが、サトシ・ナカモトの書いた論文p92で、ブロックチェーンテクノロジーが偽造防止の特殊技術p103ということについても、言葉は聞いたことがあっても、概念についてはなかなか理解が難しい。
 競争原理を応用した信頼性確保で、検算参加者が自発的に行う採掘作業POWと呼ばれるということp107など、どうついていけばいいか・・・最小単位がsatoshiというのも、生みの親からきているp113ということは、わかった。さらにマイニングの7割が中国人に集中しているという事態p114は、驚いた。


 また、深層ウェブやダークウェブと呼ばれる領域が、世界の3割強をしめていて、犯罪者やテロリストが多く利用する、という実態には、恐くてなかなか近づけないがゆえ、本著で雰囲気だけでもわかったのは有益だった。TOR(トーア)ブラウザと呼ばれるアプリで、通信経路の暗号化が図られているというp125が、手を出すと危なさそうで、とてもでないが本著でうかがい知るのみ。


発刊した光文社のサイト→ http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039813


 p166で、個人的自由を縦軸に、経済的自由を横軸にして、左翼と右翼、リバタリアンとポピュリストが対角線で描かれる図(デイビッド・ノーランの思想概念図)というのは、いまの政治思想状況を考えると一つの軸の分け方で、妥当性はあるのかどうか?保守と革新、という対比を含め、どういう軸でものを見て考えていくのか、物差しがなかなか難しい。10月22日に投票が行われる見通しになった総選挙では、いったいどういう選択肢・対立軸が見えてくるのだろう。


 なお著者が、アメリカで起きている自由の失敗は、治安と教育で、いわゆる「刀狩り」と「教育機会の均等化」は、近代民主主義国家が打ち立てるべき二大看板だといえるp173、多国籍企業の行動が経済原則に陥る要因のひとつで、公より個を優先するリバタリアニズムがもたらす最大の弊害の一つp175という指摘については、視点してとても興味深く感じた。


 著者は、自由な情報の伝播が独裁政権が最も危惧するもので「インターネットは民主主義国家にとって、最も平和的な最終兵器なのである」p177とし、日本がサイバー法への国際協力を進めるべきp189という提言をしているが、高度情報化社会を迎えた今の時代、手としてはありうると感じた。


{2017/9/11-12読了、記入は23土}