読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

官邸から見た原発事故の真実

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)

原発稼働を2030年代にゼロにするという政府の目標に対して、主要新聞各紙では、朝日、毎日、東京が原発ゼロを支持し、読売、日経、産経が批判的立場をとるなど意見が分かれる中で、何が事実なのか、論点なのかを知るうえで、本著は極めて有益な一冊だ。政界・官界・財界ともに、「根拠のない楽観的空気」に陥ることなく、遠い将来を見通した進路決定をしていく必要があると思う。高レベル放射性廃棄物の問題がクリアにできず、目に見えないコストの大きさを考えれば、ドイツのように明確な政策転換を進めていくことが必要だと、著者は語っている。この分野の専門家として、原子力村で推進をしてきた立場の方が主張している内容だけに、重い発言だと感じる。著者が最後に語っているように、「過去への深い反省」から、「パンドラの箱」の最後に残る「希望」を見出したい。

(目次-引用)
第1部 官邸から見た原発事故の真実
p14:福島原発事故が開いた「パンドラの箱」;←さらに深刻なリスク=真の危機が連鎖的に浮上する
p20:原発事故、現在の「最大のリスク」は何か;=「根拠のない楽観的空気」
p23:「首都圏三千万人の避難」という最悪シナリオ;←アメリカやフランスはわかっていたから自国民を避難させた
p36:「安全」を語ることの自己催眠;
p44:「身」を正し、「先」を読む;←★行うべきことは「原子力行政の徹底的な改革」と「原発事故対策と原子力政策の長期的展望を国民に示す」(p253のまとめでは、『抜本的な転換』と踏み込む)
p57:証明できない「十万年後の安全」;高レベル放射性廃棄物は、社会的に受容できるかどうか。


第2部 政府が答えるべき「国民の七つの疑問」
1.原子力発電所の安全性への疑問;→「人的、組織的、制度的、文化的な安全性」を含む
2.使用済み燃料の長期保管への疑問;→「トイレ無きマンション」と同じ
3.放射性廃棄物の最終処分への疑問;→NIMBY=Not in My Backyard「私の裏庭には捨てないでくれ」という社会心
4.核燃料サイクルの実現性への疑問;
5.環境中放射能の長期的影響への疑問;「直ちに影響はない」が、緊急時被曝を最小に+長期的被曝と健康被害を最小にする
6.社会心理的な影響への疑問;→信頼を失うほど増える+社会的費用の増大
7.原子力発電コストへの疑問;→「目に見えないコスト」も考慮すべき


第3部 新たなエネルギー社会と参加型民主主義
p218:「脱原発依存」のビジョンと政策;
p220:「政策」ではなく「現実」となる脱原発依存
p230:現実的な選択肢を広げる「四つの挑戦」
1.原子力エネルギーの「安全性」、2.自然エネルギーの「基幹性」、3.化石エネルギーの「環境性」、4.省エネルギーの「可能性」
p242:フロムが『自由からの逃走』の中で語った指摘に、我々は耳を傾けるべきでしょう。それは、
第二次世界大戦前において、ファシズムが抬頭した本当の原因は、彼らの政治的宣伝の巧みさにあったのではない。この時代の人々の心の中に『自由に伴う責任の重さから逃れたい』との無意識があり、その責任を肩代わりしてくれる強力なリーダーを求める社会心理が生まれたことこそが、本当の原因であった」という指摘です。+劇作家ブレヒト「英雄を必要とする国が不幸なのだ」


{9/19-21読了、記入は23}