読書録

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国家と秘密 隠される公文書 

国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

 森友、加計、日報、国会とメディアでは、連日、文書をめぐる問題が大きくクローズアップされているが、本書では、これらの問題の背景にある公文書管理をめぐる歴史と現状がよくわかる。

 過去に薬害エイズ水俣病満州事変など、情報が隠されたことによる問題が多々あり、序章でまず、「適切な情報開示と公文書管理がともなわない状況は、行政の責任を問えない、行政は責任を問われないということであり、国民の利益に反する結果を招くことになる」p17という指摘は重い。

 本書の帯でも使われ、p61に引用がある言葉「知識は無知を永遠に支配する。だから、自ら統治者となろうとする人々は、知識が与える力で自らを武装しなければならない  ――ジェームズ・マディソン(米国第四代大統領) 一八二二年八月四日」は、集英社のサイトで、著者は、ローレンス・レペタ明治大学特任教授が、特定秘密保護法に反対する集会で紹介していた言葉とのことで、情報公開制度の必要性を言い表しているとも言える。

 この情報公開制度、公文書館の整備や制度が、諸外国に比べて相当遅れていることが、本書では繰り返し指摘される。国立公文書館設立が1971年、公文書館法は1987年、公文書管理法は2009年(施行は2011年)p23で、情報公開法は細川連立政権が成立した1993年以降p72で1999年に制定2001年施行されたが、p82:当時の新聞記事によれば、「文書を作らず、残さず、手渡さず」という「不開示三原則」が官僚にはあって、情報公開制度の骨抜きを計ろうとしていたとされているという。

 公文書管理法については、福田康夫氏が渡米した際にアメリカの制度の便利さを知り、首相になってから、三菱総研出身で米上院スタッフもつとめていた上川陽子議員を担当大臣にして研究させ、消えた年金問題の解決のためとして法制定を実現させたというッp84-87

 また、特定秘密保護法の制定によって、防衛秘密が2007年から12年までの間に約4万2100件が廃棄されたp176とのことで、廃棄されないよう、情報公開法や公文書管理法で無害化することができ、法律間の整合性を精査・検証することが急務だと著著は訴えている。p179 



発刊した集英社のサイト→ http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0759-a/
著者のエッセイ→ http://shinsho.shueisha.co.jp/seidoku/index1410-2.html



 本書で紹介されている、電子情報を公開しているサイトをメモ
国立公文書館日露戦争の資料もp124:http://www.archives.go.jp/
アジア歴史資料センターp153(2001年):https://www.jacar.go.jp/ 


 おりしも、映画『ペンタゴン・ペーパーズ』が公開され、いかに情報が重要なのか、そしてその扱いが課題か、よくよく考えなければならないと思う。


{2018/4/8-9読了、記入は4/10深夜}