読書録

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働き方改革の経済学 少子高齢化社会の人事管理

働き方改革の経済学

働き方改革の経済学

 働き方改革をめぐっては、厚労省のデータの問題から、裁量労働制の適用業務の拡大が削除され、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す制度の導入の是非をめぐっても国会で論戦になっている。確かにデータの誤りは問題ではあるが、本書では、今の時代に現在の年功序列という正社員の制度自体が課題だという提起をしている。


 同一労働同一賃金を実現しようとすれば、欧米のようにより雇用を流動化さるとともに、時間に囚われない働き方として、2000年代から電機労連などが会社と作り上げてきた新裁量労働制は「世界標準の働き方」p76だとする。そして「形式的な労働基準違反として摘発し、働き方改革に結び付けなかった当時の近視眼的な労働基準監督行政が悔やまれる。こうした固定残業代は働く時間が不規則なマスコミ業界ではすでに実施されているが、すれは現行法上ではやはり違法行為となる。これを実際の現場の働き方に合わせた法律に改正しなければ、見かけ上の違法行為がまん延することになる」p77と主張している。



発刊した日本評論社のサイト→ https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7539.html



 定年退職制が、欧米では原則禁止になっていて、これは「同一労働同一賃金」の原則下では、年齢による差別にあたるp95ということで、包括的な雇用契約をしていることに大きな原因があるp107とする。高齢者雇用促進のために「40歳定年制」が提言されているp107というのも新鮮な驚きではあった。「高齢者も含めた幅広い人材活用のために、企業に高齢者の雇用保障を義務付けるのではなく、年齢差別としての定年制自体を不要なものとするための雇用の流動化のための改革をめざすことが必要となる」p110と、著者は主張している。


 雇用の流動化について、著者は、「企業の得、労働者の損」というイメージが強かったが、今後の社会ではむしろ逆になる可能性が大きいp140という。本書の内容は、現政権の働き方改革を後押しする側面があると感じつつも、改革を実現するために必要とされる諸課題については、備忘録としてメモしておきたい。


◇残業代至上主義を克服する方策p179-150
1)残業時間管理の徹底化、2)成果に応じた賃金制度の適用、3)雇用の流動性を高める仕組み(退職で不利にならない)

◇人事評価の3点セットp151-152
1)直属の上司による一般社員の評価書の作成とランク付け、
2)対象者の社員に必ず見せ相互コミュニケーション
3)社員と上司との人事評価の意見の違いを見比べて裁定し評価を修正するトップ管理職の役割

◇市場原則で決める管理職ポストp159:業務を厳しくすることで専門職で結構という社員を自らの選択で増やす
1)部下の仕事の範囲を限定し他に属せざる仕事は自分で引き受ける
2)部下の仕事を常にモニターし、求められればその手本を示すこと
3)部下の評価を明確に示し、それへの批判に対して誠実に対処すること、
→現在の低成長期でポストが限られる状況では、欧米型の早い昇進、すなわち、無限定で働く少数の幹部候補生以外は、ワークライフバランスが可能な専門職としての働き方で満足する方が望ましいといえるp142


 働き方改革には、さまざまな考え方があり、それこそ“多様性”のなかで、何が最も理想的なのか、自分の頭でこれからも考えていく必要がありそうだ。
 

{2018/2/23-24読了、記入は11日曜}