読書録

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「決め方」の経済学 「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

 イギリスのEU離脱や、アメリカのトランプ政権誕生など、民主主義の決め方が民意を反映しているのかどうか?それは正義といえるのか?という事案が続いているが、本著は、決め方によって結果が大きく異なる可能性を、さまざまな数理モデルを使って、解説している。

 オストロゴルスキーのパラドックス(p23)では、争点によって、直接選挙と間接選挙では、結果が正反対になるという事例を示し、より民主的な決め方として、決戦投票付き多数決(フランス大統領選や自民や民主の党首選などp40)や、1位に3点、2位に2点、3位に1点という順位に配点するボルダルール(本屋大賞マンガ大賞などp96)が民主主義と相性が良いことなどを説明している。
 また、法廷の決め方で、理由ごとの多数決と結論の多数決で結果が変わりうる(p165)ということなど、ふだんは見落としている“気づき”を与えてくれた。


◇発刊したダイヤモンド社のサイト⇒ http://www.diamond.co.jp/book/9784478064870.html
+関連記事の連載リスト⇒ http://diamond.jp/category/s-kimekata

◇ブック・アサヒ・コムに掲載された書評⇒ http://book.asahi.com/reviews/column/2016090400014.html


 第8章の「多数決で正しい判断ができる確率〜陪審定理」では、数式なども出てきて、うなってしまうところがあるが、次の第9章で、多数決を正当化できるための条件としてp134に3つの使用条件として以下提示される。
(1)対象に、皆に共通の目標がある
(2)判断が正しい確率は、0.5より高い
(3)各自で判断するし、独立性がある。
 あわせて、マンション自治会の「議長委任」はダメだというのはそうで、あらかじめ表明しておいた方がいいというのは、確かに!と納得しつつ、著者の「多数決はどうでもよいことを決めるのにむいているp138というのは、皮肉でもあるように感じる。

 マンションを例にとって、エレベーターの改修費用分担に、シャプレー値を適用(p185)しつつ、何割かは均等負担にする、その割合を決めるには、「中位選択肢」で決める、というのは、現実的に使える手法・考え方で、用語をメモして備忘録としておく。
 
 著者はまたあとがき(p212)で、メディアによる世論調査で、ボルダルールや総当たり戦のような聞き方をするよう推奨し、民意の可視化によって、よりよい選挙制度に変えるべきと提言されているが、これはなかなかハードルが高そうではある。ただ、さまざまな決め方があることは、よく認識しておきたい。 


{2017/02/06-14読了、記入は17}