読書録

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池上彰の政治の学校 (朝日新書)

池上彰の政治の学校 (朝日新書)


わかりやすい解説でTVで活躍されている著者だけに、政治の切り口もわかりやすい。
いま発言をめぐって話題になっている橋本徹大阪市長の姿勢についても、その背景というか特徴がうまく分析されている。

いくつかポイントになるところを引用と概略で列挙。


◇『日本の政治がうまくいかないのは、政治家が「票集め」に走り、国民は「幸せの青い鳥」を追い求めているからです』p16

◇日本では十分な準備がないまま総理大臣になることもあるためお粗末なことがおこり、アメリカの大統領のように手間暇とお金がかかっても国民が育てるという思想がないとだめ。総理大臣を育てる仕組みを作る必要がある。

◇自民VS社会の55年体制は、社会保障や税金の使い方など社会民主主義的で、政策でわかれているわけではない。とにかく憲法を守れという一点だけで譲れないのが、社民と共産で、支持の広がりがなくなってきている。

天下りがなくなると、あまり優秀でない官僚も定年まで省庁が面倒をみなくてはならず、それこそ税金の無駄遣いに。

◇中国は民主主義的とは言えないが、政治局の9人の多数決で決めるところは、民主主義が成立している。ただ、ネットの偏った意見ぐらいしか参照できないところに、政策が偏った判断に流れる面がある。アラブの春はSNSがきっかけだったが、大衆的に広めたのはあるジャジーラというテレビで、中国には政府の検閲を受けない中国語放送がなかったから。


◇ネットの普及で、情報を右から左に流す仕事になっていた時代は終わるが、記者の仕事がなくなるわけではなく、分析はむしろこれからの時代には必要になる。+ネットでの盛り上がりは、そのまま世論の盛り上がりではない。むしろ少数派という自覚が必要。


◇『橋本氏ならば、今の日本の閉塞感を打ち破ってくれるに違いない。国民がこのように期待していること。これこそが橋本氏の支持の源泉なのです。まずスピード感が抜群です。とにかく、決断が早い』p195
(橋本氏の人気は、小泉氏と同様、小さな政府など政策を支持しているわけではない)

◇『恐ろしいのは、「とにかく今とは違った状況を作ってくれ」という要求を繰り返していても、世の中は改善されないだろうということです』p198

◇(弁護士としての橋本氏は和解がうまく)『和解にもっていくという交渉術というのは、まさに最初にふっかけておいて、落としどころを自分の都合のところに持ってくるというものですから、彼はその技術に長けている。それを政治の場に応用しているのだと思います』p203

◇『政治家が民衆の人気取りに走ってしまい、本当に必要な政策を実行しない。そして民衆もそれを咎めることがない。それがポピュリズム衆愚政治)の基本的な症状です』p205
(移民排斥や愛国保守など極端な主張をすると、一定の票数を獲得できてしまう)
ポピュリズムに陥る心配がなかったという意味では、官僚主導にも見るべき点はある)


◇『期待しては裏切られ、期待しては裏切られ…もう日本の政治には絶望してしまった。そう考える人がたくさんいる。これが現在の閉塞感の原因だと思います……今はそのような成熟した政治に辿り着くまでの試行錯誤をしている段階なのだと思います』p220
⇒青い鳥は見つからず、結局、自分の身近なところにいる鳥を青い鳥にしなくてはいけない。p222

◇民主主義を育てようと思うのであれば、早いうちから政治に興味を持つような教育は必要。


{5/20-23読了、記入は29}