読書録

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ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

ネット選挙が解禁された先の参院選で、期待された投票率の向上などあまり変化がなかったというのが実感で、若干冷めた感じがあるが、本著では、ネット選挙運動の解禁という本質は『価値観の選択』で、公職選挙法が求める『均質な公平性』なのか、インターネットの設計思想『漸進的改良主義』を受け入れるのか、という問題点が、繰り返し主張されている。
この「完成度が高くなくともプロトタイプをまずは公開し、問題が生じる都度、試行錯誤を経て修正するp49」考え方を、どこまで理解できるか?既存のメディアが「公平性」に縛られる中で、もっと自由に取り組むことができなければ、将来のオープンガバメントやデジタルデモクラシーの時代に対応できなくんるのではないか、という論点は、よくよく考えていくべく課題だと感じた。

著者の主張については、『WEDGE Infinity』の「ウェッジの書籍のコンテンツ」にまとまっていたのでリンク先を紹介⇒ http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2965?page=1


(目次ー引用)
序章:ネット選挙とは何か?;

1章:間違いだらけのネット選挙論;
◇ネット普及で解禁は的外れな議論、他の普及したメディアでは制限され、なぜネットのみ自由?
◇ネットツールは無料だが、効果的な運用にはコストがかかる
◇「とりあえずネット選挙」実行で行き詰りそうな日本社会のあり方こそ大きな問題として設定
p66:求められているのは、「日本の政治を改善するために、インターネットをどのように使えるか」を考えること⇒価値観の転換への世代を超えた共感が必要


2章:ネット選挙解禁の土壌、日本の事情;
◇解禁問題は、どちらの価値観を選挙制度の土台にするか、その選択を迫る
◇重要なメディアへの認識で、テレビが92.1%(2005)→94.4%(2010)(総務省の平成23年版 情報通信白書より)で増加したが、新聞は9%下落して77.3%、ネットは20%改善して61.4%に。
ソーシャルメディアの3つの技術特性:即時性、拡散性、相互浸透性


3章:2012年までの日本のネット選挙の歴史;
◇(なぜ解禁に)p117積極的な理念を打ち出しているのは、みんなの党の「多数な民意を政治に反映させるため」と、共産党の「主権者である国民が気軽に多面的に選挙に参加できる」のみだったといっても過言ではない。
◇効果的な政治のPRをデザインするためには、高度な専門知識と経験が欠かせない


4章:2012年衆院選から2013年の動向;
◇米の「インフォグラフィクス」手法→朝日新聞12年衆院選で「ビリオメディア」企画で異彩


5章:ネット選挙を考えるためのヒント;
◇新しいメディア、技術が、「政治を変える」という変化仮説と、「統治構造を強化する」という正常化仮説→ただ導入しただけでは変わらず、むしろ変えるための使い方という固定観念の転換が必要
◇キャス・サンスティーンの『集団分極化』概念


6章:日本の議員たちとソーシャルメディア―「ツイッター議員」の登場;
◇分析対象がFBでなくツイッターになるのは、プラットフォームのオープンさと公平さで分析できるから
◇日本の政治家は双方向性に消極的で、ユーザーも関心がない」仮説の分析
→双方向性(メンション率)と情報伝播性(RT率)の高低で四分類化、ツイート数やフォロー数など比較すると、「雄弁ではない」姿が浮かびあがる


7章:ネット選挙解禁がもたらす変化;
◇ネットメディアだけが自由なコンテンツの配信が認められて良いのかどうかという議論は今後も継続的に行う必要あり
◆ビデオリサーチ社によれば、世帯視聴率1%あたりが約18万世帯に相当する「視聴率からの視聴世帯・人数の推定」、世帯平均人員1.98人をかけると、サンデーモーニングで774万、真相報道バンキシャ!で578万人、情報7daysニュースキャスターで503万人という計算に。
◇解禁は、中長期的にはマスメディアの地位並びに存在感の低下を予見させるが、短期的には、政党や政治家の適応行動とあいまって、ネット選挙の普及と拡大に貢献し、マスメディアの存在感を示しうるかもしれない


終章:ネット選挙が日本の民主主義をよくするには?;
◆p224:課題認識、「政治の不透明さ」「国民と政治家の遠い距離」「新しい政策アイディアの枯渇」に対応して、「政治の透明化」「国民と政治家との距離の短縮」「政策立案競争」が必要であるというのが筆者の主張だ。
◆p225:ネットのみに議論を限定するのではなく、従来のメディア利用や戸別訪問、電話の利用やあいさつ状の問題を含めた、総合的な展望と議論が必要であると考えている
◇モバイルトイレナビなどデータシティを標榜する福井県鯖江市、横浜市千葉市もオープンデータの取り組みを始める
◇ネット選挙がもたらしうる神話の数々(コストを引き下げる、投票率があがるなど)を解体しつつ、それでもネット選挙解禁が日本社会にとって必要であると主張してきた。…政治と情報・情報技術の距離を近づける可能性をもつからだ。…終着点ではなくむしろ出発点。

{9/16-20読了、記入は22}