読書録

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釜ヶ崎で表現の場をつくる喫茶店、ココルーム

釜ヶ崎で表現の場をつくる喫茶店、ココルーム

釜ヶ崎で表現の場をつくる喫茶店、ココルーム

 2003年、「新世界」で生まれた「アートNPOこえとことばとこころの部屋」=通称「ココルーム」の15年の歩みと、釜ヶ崎芸術大学について、谷川俊太郎鷲田清一など関係者との対談も含めてまとめられた本。巻末には釜ヶ崎用語集や年表もあり、資料的な価値も高い。おわりにに記されているように、10周年を記念して企画されたが、まとめるのに5年かかり「奇跡のようなものp220」とのことで、関係者の努力も大変だったろうと推察する。

 本著の中の「特別講演録」に登場する政治社会学者の栗原彬(Wikiで→)立命館大学特別招聘教授は、学生時代に読んだ『やさしさのゆくえ=現代青年論』( http://www.arsvi.com/b1900/8106ka.htm )にインパクトを受けただけに、いまこういう活動をされていると知り、感慨深いものがある。本の内容はあまり覚えていないのだが、その後、直接講演をお聞きし、ベストセラーになった『赤頭巾ちゃん気をつけて/庄司薫 1969年』『僕って何/三田誠広 1977年』『なんとなく、クリスタル/田中康夫 1980年』という変遷から、青年の意識の変化を語っていたことは、今でも良く覚えている。今ならどういう時代状況だろう…
 本著の中では、「自治:自分の中の他者を動かす」というタイトルで、p155〜<まず「生存 」が問われる。第二に、単独ではいきられないという意味での「共生」、それから「存在の現れ」につながっていきます。この三つの問題がそれぞれに密接にみつびついていると思います〜(生存は溜めと言い換えることができ)お金だけでなく仕事とか、家族とか友人とか、自分に対する自信といった「溜め」がなければ生きていけない。だけど、それだけではだめで、溜めが生まれるには、目地(めじ)(←建築用語で遊び=余白)が必要>と述べているところを備忘録として。この論考では、釜ヶ崎で異交通を部分的にも経験できるかもしれず、異交通が閉塞した状況をひらいていく力が未来へつながる、という話になっている。もう一度、お話を聞けるなら聞きたい方だ。


出版したフィルムアート社のサイトに目次と寄稿者名あり⇒ http://filmart.co.jp/books/society/life/cocoroom/
著者が代表をつとめるのココルームのサイトで本紹介⇒ http://cocoroom.org/2016/05/26/


 本著には<問い、問われる Q&A16>があり、関係者が答えるのだが、その中から印象に残った部分を備忘録で以下に3つだけ概要を引用
◇Q1 何かやりたいけど何をやったらいいかわかりません。p68〜
A西川勝(臨床哲学者):自分を頼りにすることが問題の原因で、「自分」をできるだけ小さく、軽く、弱くしてみればどうか〜吹く風に身を任せてみれば〜自分に向かってやってくる仕事を大切にしよう〜自分を乗せてくれる風に乗って知らない世界に旅立とう〜
◇Q15 結局、何も変えられないのではないですか?p128〜
A山田實(釜ヶ崎支援機構理事長)&アサダワタル:(釜ヶ崎の矛盾を一言で言えば、違法行為を「なかったことにする」という国の態度だ)身を捨てること。変化を感じること。そして、行動すること〜本当に大切なのは、その“変わっていく”過程に、自らの意志と希望を織り込む感性を持ち続け、具現化していくことなのだ。
◇Q16 どうして働くのですか?p136〜
A金友祐人、植田裕子、茂木秀之&著者の文:私はひとりでは生きていけないからだと答える。「働くことはいのちをつなぐこと」〜名も知らぬ誰かと関わりながら生きる。働きあっていると思えることが、生きることを支えている。


{5016/10/11-22読了、記入は23}