読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

アル・ゴア未来を語る

6つの要因「1アース・インク(地球株式会社) 2グローバル・マインド 3力のバランス 4増殖 5生と死の再創造 6崖っぷち」の各章ごとに、膨大なデータや事例を紹介しながら、世界の将来像について警鐘を鳴らしている。各章ごとに図示されるマインドマップも興味深い。30年前に学んだ「相互依存論」を思い出しながらイメージすると、地球規模の課題が深刻化する一方、ICT技術の発達によって時間や距離の制約が少なくなり、経済的な統合が実現しつつあるなか、国民国家を超越するような枠組みが可能になってきたのかどうか、ということだろうか。しかし、パワーポリティクスの現実がある中で、どう乗り越えて理想に近づけていくのかが、課題かと考える。


出版したKADOKAWAのサイト⇒ http://www.kadokawa.co.jp/product/301306001022/
目次と副題の「世界を動かす6つの要因」については、プレスリリースにあり⇒ http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000968.000007006.html


印象に残ったポイントを備忘録的に以下引用。
マッキンゼーによるサイバーセキュリティ問題化の4つの傾向p138
1.価値がネットワークに移り続け、デジタル・データがより広く浸透するようになった
2.企業は今や、かつてないほどに「オープン」であることを期待されている
3.サプライ・チェーンがますます相互につながり合っている
4.悪意のある主体がより高度になりつつある

◇日本とイタリアは出生率の減少を鈍化させられない結果、労働年齢人口の比率が下がり大きな負担となって、年金の調達財源で大きな困難に直面するp268←スウェーデンとフランスで出生率を上昇させたのは、家族を支援し、働く親が子どもを望む場合にそれを容易にするための政策に国民所得のおよそ4%を支出した。出産・育児休暇の充実、幼稚園の無償化、手ごろな値段での質の高い保育の提供、優れた母子保健医療、女性が出産後にキャリア・パスに戻るための保護などの恩恵を設けた←このところ読書録にアップした「データで読む平成期の家族問題」や「女性が活躍する会社」でも示されている論点だが、この問題の深刻さと対策の必要性は急務かと考える

◇本書で取り上げている要因の別の表現p461:グローバル化とアース・インクの出現、デジタル革命とインターネット革命とコンピューター革命、生命科学革命とバイオテクノロジー革命、世界の政治と経済における力の均衡の歴史的変化、そして、人間の価値を顧みない、私たちの将来に不可欠な重要な資源を枯渇させる恐れのある「成長」の形への傾倒

◇民主主義も資本主義もずたずたで、エリート層が政策決定を抑圧的に支配し、所得格差が拡大して富の集中が進み、あらゆる改革努力が停滞している。市民が建設的な形で嫌悪感を示す能力が、主要なマスコミ媒体であるテレビの構造(←商業放送&ロビー団体)によってくじかれ、テレビは主に商品の消費を促し、娯楽を与えるものであり、双方向の対話や協働の意思決定の手段は何ら提供しないものになっているp528

◇変化の流れが激しい中で舵をとること→資本主義と自己統治に広がっている欠陥や歪みを修復すること:「腐敗した政治資金の汚職を取り締まり、特別利益団体の抑圧的な支配を断ち切り、代表民主制における集団的意思決定の健全な機能を取り戻して公益を促進することだ。市場を改革し、私たちの長期的な利益にかなうようにインセンティブを調整して資本主義を持続可能にすることだ。たとえば炭素汚染に課税して労働への課税を減らず、すなわち年収ではなく燃焼を財源とするのであるp533」

◇p534:最優先すべきは、私たちが行わなければならない難しい選択に関して、広く利用しやすい公開討論の場で、率直にわかりやすく互いにコミュニケーションをとり合う能力を回復することだ。つまり、インターネット上に、活気ある、開かれた「公共広場」を構築し、新たに姿を現しつつある難題への最善の解決策や、機会をとらえる最善の戦略について議論するのである。また、公開討論の場を、公益に反する意図をもった特別利益団体やエリート層の支配から守ることも意味する。とくに重要なのは、民主主義制度のインターネットへの移行を加速させることだ。(活字からテレビへの移行で民主的な議論が抑えられ、富と権力を持った人が優先的にアクセスできるようになり、特に米国では政治においてお金の果たす役割が大きくなり、人々が論理的に話し合う能力が低下…利益第一で娯楽とニュースの境をあいまいにし、大手広告主がニュース番組の内容に大きな影響力をもつようになり、報道幹部のふりをした政治屋がニュースのストーリーを皮肉に歪める…ジャーナリズムが民主主義に不可欠な役割を適切に演じるための、十分な誠実さや独立した判断力を維持する能力が低下してきたp535)
◇p535〜:インターネットは、このような民主主義の劣化を逆転させて、健全な自己統治の基盤を再構築する格好の機会を提供する。今のところ、インターネット上での質の高い調査報道を支援できるだけの十分な利益をあげる標準的なビジネスモデルは存在しないものの…さらに、優れたインターネット上のジャーナリズムを支援する官民複合モデルの利用が大いに追求されるべきである。←この点については、きわめてアメリカ的であり、イギリスや日本における公共放送&ネットでの場の提供というのが、有効なのかもしれない。


{12/19-23読了、記入は27}