読書録

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コモンウェルス 下

コモンウェルス(下) 〈帝国〉を超える革命論 (NHKブックス)

コモンウェルス(下) 〈帝国〉を超える革命論 (NHKブックス)

正直言って、よく理解できなかった。新聞紙面などで、著者たちの帝国3部作が取り上げられ、マルチチュードという言葉など触れられることがあるので、概念を知ろうとしたのだが、アメリカの新保守主義や単独行動主義が破たんしたとして、その後の世界観を紡ぎだそうとしているとは感じるものの、どこかしっくりこない。「共」(コモン)が重要で基軸にしていくという理想はいいとして、そのための革命とか制度化とか、あまりに現実離れしているのではないかと受け止めてしまうところがある。


この下巻には、監訳者の水嶋一憲教授の解説、<共>の革命論が含まれているので、その引用から、少し引用して記録に残しておく。

◇現在のグローバル秩序の動向を批判的に分析し、そうした秩序を根底的に変革するための概念を提供することをめざす
◇『帝国』では、新たな権力形態の特性を「帝国的」と呼び直し、多種多様な権力間の協同関係と協治において捉えようとする試み
◇『マルチチュード』は、グローバル民主主義の構成へと向かう多数多様な集団的主体(スピノザが提示した異例の政治概念を受け継ぎつつ)を名指した。人民や大衆、労働者階級とは区別。多種多様な社会的生産の担い手すべてを含みこんだ包括的な概念でありながらも、共同で活動することのできるグローバル民主主義の構成主体を指し示す開かれた概念…
◇帝国へと向かう動きに内側から敵対するマルチチュードの闘争の新たなサイクルが開始され、そこでは、コモン<共>に基づく民主主義の構成が志向されているという事実にも大きな注目が集まりつつある…
◇私<資本主義的な私的所有>対公<社会主義的な国家所有>という旧来の二項対立に斜めから切り込みながら、<共>にもとづく革命の制度化のための開かれたプラットフォームの構築に取り組んでいる
◇民主主義、自由、愛、幸福、共産主義、革命といった、かつての輝きをとうに失い、今や汚辱に塗れながら、嘲笑や冷笑を浴びせられているように見える一連の概念を再考し、それらに新たな力を吹き込もうとしているのである。
◇特異性と同一性の概念を厳密に区別し、愛という概念と結び付ける。同一性の固執によって共を分解する腐った愛に依拠した制度の代表として、家族、企業、ネーション(国民/民族)の三つをあげる
◇『宣言』2012の電子書籍で、<共>の革命論をベースに、生きること、自由、平等、幸福の追求、<共>への自由なアクセスといった不可侵の権利が自明の真理として提示されるとともに、それらの権利を侵害する統治形態は廃絶され、新たな政府が創設されるべきであるといった原理が宣言されている。
◇批判でポピュラーなもののひとつは、あまりに楽観的・楽天的なトーンに満ちすぎている、というもの。


{2/25−3/2読了、記入は3/6}