読書録

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ネット時代の地方自治

ネット時代の地方自治

ネット時代の地方自治

「首長の役割は、…ネットツールを自治体の組織としてうまく活用しながら、「顔の見える地域社会」がコミュニケーションを交わし、連携していくことが出来るよう、リーダーシップを発揮していくことだろうp232」と最後にまとめている本著。検索すると、自治官僚の著者は、2013年6月に神戸市副市長を退任して市政を引き継ぐ形で、自民・民主・公明の推薦を受けて無所属で神戸市長選に立候補し、10月当選している。8月という本著の出版時期を考えると、すでに選挙を意識していた内容なのかもしれないが、どちらかというと学術書を読んでいるかのような引用があった。


本著の狙いや目次については、著者が自身のオフィシャルブログで記している⇒ http://hisamoto-kizo.com/blog/?p=766


備忘録的な引用としていくつか以下に。
◇「ネット空間のコミュニケーションの特徴としては、匿名性、即時応答性、空間的・時間的制約からの解放などがあげられよう…地方自治の原点は、むしろ逆のところにある。…原点は『顔の見える地域社会』だp1」と冒頭に登場する、≪顔が見える≫は、ある意味、本著と地方自治体を貫くキーワードになっている。
◇このところ引用されることが多いロバート・パットナムの『孤独なボウリング』について、「人々がさまざまな団体・組織に加入する割合が減り、人付き合いの頻度が減ることで、コミュニティにおける社会的信頼や活力が失われている、と警鐘を鳴らした。…悪玉として挙げられたのは、テレビであった…社会関係資本の減少をもたらした」p78
◇ネットコミュニティが地域の活性化に大きな影響を与えた例として、「2ちゃんねるがローカル線を救う」2006年にぬれ煎餅支援お願い文をアップして支援が広がるp85
◇「難病や障害に苦しむ人々の場合、同じ生活圏の中にはその苦しみを共有できる人がいないことも少なくないだろう。そんなとき、ネットが地理的制約を取り払い、人と人をつなげることに貢献している。このようなケースでは社会関係資本が増えていると言えるp94」については、自分の経験を含めて、全く同感。それが一つの価値だとも感じている。
◇これも引用を良く見る『忘れられた日本人』の宮本常一の言葉から『本来幸福とは…村民一同が同様の生活と感情に生きて、孤独を感じないことである。…喜びを分ち、楽しみを共にする大勢のあることによって、その生活感情は豊かになった。悲しみの中にも心安さを持ち、苦しみの中にも絶望を感じしめなかったのは集団の生活のお蔭であったp108←『家郷の訓p193』』という内容は、幸福学に通じるところがある。
◇ネットでの議論は終局点がなく下火になれば次の人気テーマに移るが、議会では結論が得られる決断の場で、「ネット時代であるからこそ、改めて、議会の価値をかみしめるべきだp218」というのは、そうなのかもしれない。


{3/23-29読了、記入は4/4}