読書録

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ディズニーの隣の風景

ディズニーの隣の風景: オンステージ化する日本

ディズニーの隣の風景: オンステージ化する日本

浦安在住でテーマパーク論を更新して地域論をまとめたいと著者は『ゼロ年代の論点』で記していたが、本著で再び、様々な事例・著作をひもときながら紹介している。それだけで、ディズニーランドの誕生の経緯や浦安の歴史を含め、いわばカタログ的な内容となっている。以前、この読書録で課題として指摘した( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20120327 )点では、今回、“一般読者”に近づいたような気もする。全体のテーマとしては、副題にある通り、「オンステージ化する日本」で、浦安という街を舞台に、考察が進められていく。


出版した原書房のサイトに目次が掲載⇒ http://www.harashobo.co.jp/new/shinkan.cgi?mode=2&isbn=04886-1


また、著者がはてなダイアリーのタイトルで紹介⇒ http://d.hatena.ne.jp/ending/
本著についての記事は⇒ http://d.hatena.ne.jp/ending/20130123


備忘録的なポイントとしては以下。
◇p12「ネットは、テレビに匹敵するメディアになりつつある…特定の場所を前提にしてきた事象が、インターネットなど情報空間のレベルへ移行していることも、地域、場所の意味を変質させている」
城山三郎の『官僚たちの夏』に、50年代の廃液で浦安の漁場に被害を与えた<黒い水事件>をモデルにしたエピソードがあり、「元浦製紙」として登場p18←読んでみたい
◇浦安は「男はつらいよ望郷編」1970年に舞台、1985年の「元気が出るテレビ」で「元気が出るハウス」がつくられたp19-23 + 『101回目のプロポーズ 1991年』で「僕は死にましぇん」と叫ぶのは浦安新町のシンボルロードで撮影されp205たことがあり、街をオンステージ化する映画『カルテット 2011年』撮影を肯定的に受け入れたかp203-206
◇ブライマン『ディズニー化する社会』で、パフォーマティヴ労働が社会に広がることを例示p30→漁場としての海を失いテーマパーク招致をきっかけに街を変形させた浦安が、オンステージ的ではないはずの風景にまでパフォーマティヴな要素に
平野啓一郎『ドーン』で用いられた「添加現実」と「生鮮現実」ということばp44
◇浦安液状化のマンホール保存をめぐり、記憶を風化させたくない市長と資産価値を下げたくないと反発する住民の対立は、東浩紀福島第一原発の観光地化への賛否両論も当然かp100
◇『最後のパレード 2009年』の回収と販売中止後などあるが、『ミッキーマウスの憂鬱 2005年』(最後は夢をつかむと肯定的)や、『ディズニー裏舞台 1993年』(身分差や待遇など労働環境に批判的)など、とりあげた本はさまざま出版されている。「九割がバイトであるディズニーは震災発生時のキャストたちの自主的な対応で大きく評価されたが、見方をかえればこのテーマパークは「やりがいの搾取」の先駆者だと批判することもできるだろう…ディズニー的な労働は劇場型パフォーマンスでありつつ、感情のレベルから客に笑顔で接しようとするものだ。ショー的要素と自己啓発的要素の融合したパフォーマティヴ労働なのである」…p137-142
液状化の街で有効だったネット情報p189〜;ネット上では複数地域の住民になれるp192〜;urayasu のハッシュタグをつけて市側が発信、リツイートもされ、使っていない高齢者にも使っている人が伝えることができた。千葉テレビやJ:COMなどCATVも多く視聴したという。

{3/29-4/05読了、記入は同日}