ポストモダンのメディア論2.0:ハイブリッド化するメディア・産業・文化
- 作者: 水野博介
- 出版社/メーカー: 学文社
- 発売日: 2017/05/11
- メディア: 単行本
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このところ読んだ本で「ポストモダン」がリオタールの「大きな物語の終焉」で、本著ではまさにタイトルになっている。その内容も、アメリカのトランプ大統領誕生をめぐり「ポスト・トゥルース」や、PPAPまで、幅広く事象を取り上げていて、学術書とみえつつ、いまのネット状況や世相もよくわかる。
序論の序2「ポストモダンの政治的・経済的背景」の項目立てを引用すると、
◇ポストモダン期における経済の停滞とメディア利用の増加
◇「テクノロジー」の発展と「高度情報社会化」
◇「差異」のゲームとしての消費文化とかわいい文化・おたく文化
◇資本主義の世界的浸透とグローバリゼーション
◇資本主義の曲がり角
◇中間層の減少と新たな価値観 などと現在の社会がどうなっているのか、なんとなく俯瞰できる。
また、序論第1章「メディア」とは何か?の3 メディアにおけるハイブリッド では、その方法として、
1)シェアあるいは棲み分け、2)接合、つながり、協同、集合知、3)相互乗り入れや融合
を紹介し、ネット利用とマスメディア利用の組み合わせが、有名になる、人気を博すことができるという。
発刊した学文社のサイト→ http://www.gakubunsha.com/book/b287210.html
本著の中で、テレビやネットに関するところで、備忘録として以下を引用
◇1980年代後半に、一時期テレビ離れが言われたが、その背景はニューメディア時代の到来が叫ばれた時期で、より明確に「視聴率の低下」が始まったのは、1990年代に入ってから。視聴時間の一部がネット利用で機能代替であり、テレビ機能自体が不要になったわけではない。p97
◇日本で商用プロバイダーが設立されたのは1992年11月、当初はパソコンのネットワーク、パソコン通信として p144
◇インターネットの活動分類は4つ、1)情報収集、2)商品取引、3)協同作業、4)交流 p147
◇口コミからソーシャルへ:ポストマンによるうさわの公式 うわさの強さ(R)は、重要性(I)×あいまいさ(A) p169
◇ソーシャルメディアのネットワークと影響力は、社会関係資本(つながり)の大きさと相関していると考えられる p177
◇ソーシャルメディアの分類で、津田大介氏を引用して、p180
・ヒトとヒトとのつながりをサポートするコミュニティ型のウェブサイト=SNS ツイッターやフェイスブック
・ユーザーが直接情報を投稿するサイトとしてのCGM:動画サイトやニコニコ動画など
+機能として、単なる連絡手段と拡散手段p184、動員するメディアp185→メディアが社会を変えるp186
+口コミ的なものがウィルスのように拡散していく現象を形容して「バイラル」あるいは「バス」というp189
◇テレビの見方を、家庭内にとどまらず、それ以外の人々と共有しながらできるようにしたのが、ソーシャルメディアの存在p237
例えば、ツイッターを用いてあるドラマを見ながら、その感想をつぶやくことで、まだそのドラマを見ていない人々に興味を抱かせ、結果として視聴率を相当に高めるという現象が最近は起きているといわれる。(半沢直樹、朝ドラあまちゃんなど)
p239:ツイッターによるテレビ関連メッセージの拡散が今後も行われ、テレビの社会的位置づけを強化する機能を果たすことが予想される。
(テレビとインターネットのハイブリッド化の項目分けとして
1)報道、2)ドラマ番組、3)バラエティ番組、4)ネット配信テレビ )
放送と通信の融合で、いったい社会やメディアの状況はどう変わっていくのか?本著で書かれているテレビのSNS活用は、ますます広がる様相をみせつつ、新聞論壇でも、テレビのあり方をめぐって、さまざまな記事が紹介されている。
すでに8/2に読了し読書録への記入を終えた「社会学の力」では、この分野については、情報化の行方については、変わるのか変わらないのか、両論を掲載するような曖昧さがあったが、本著も分野は社会学で、すそ野は広く、学ぶことができるテーマは様々あることも実感した。
{2017/7/28-31読了、記入は8/4}