読書録

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ネットの炎上力

ネットの炎上力 (文春新書)

ネットの炎上力 (文春新書)

J-CASTニュースを立ち上げた著者が、ネットニュースと既存メディアの関係や将来について、4年前に記した本だが、ネットと既存メディアの融合はますます進み、新聞はビジネスモデルを変えるなりしないと維持できず、いまやコンテンツの勝負になってきているという構造的な課題は何ら変わっていないと思う。また、著者がいわゆる田中金脈報道を受けて選挙区の地元に異動して取材を行ったことがあることや、大阪と東京の社風の違い、主流とは外れたことでネットで生きる道を見つけたことなど、こうしたモデルが立ち上がった経緯についても興味を持った。


目次などは、この上のリンク先のアマゾンで、著作権保護のコンテンツとして表示されるほか、出版した文藝春秋が、
◇本著の概要( http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166607396 )および、
◇著者本人のインタビュー( http://hon.bunshun.jp/articles/-/78 )を掲載している。

★また、http://www.j-cast.com/kaisha/2010/03/15062195.html のまさにJ-CASTのサイトで、本著の一部分をPDFダウンロードサービスをやっていたことに気づき、2/11に追記。期間限定とあるが、該当ページについては、現時点でも表示されている気がする・・


印象に残ったポイントについての概要や4年後の状況などを考えてみたい。


◇ネットメディアが新聞にかなわないのは一覧性だけで、新聞が優位性を確保するためには、優れた人材を確保し育てることができるかだがp16、何でもあるが好みを探すのが難しい百貨店の魅力がなくなってきているような状況p206で、縮小するかビジネスモデルを変えるかぐらいの選択肢しかないp212。ネットの広告体系は膨大なアクセスを誇るヤフーやグーグルの支配下にありp220、アメリカでは「ハフィントン・ポスト」が記事のリンク紹介に識者ブログで意見や見方を加え、読者のコメントも付けるという方式で、既存メディアに急迫しているp216。
←日本でもハフィントンが進出し、これを見れば確かに新聞を見なくても何が起こっていてどういう見方があるのかを知ることができるようになった。メールで主要ニュースを毎日受け取ることもでき、確かに便利で、自宅で新聞を購読する必要性が薄れてきているのは事実。


◇ネットには双方向性の機能があり、SNSを活用した新たな展開ができ、現在の地上波放送よりインターネットの方が上位概念ゆえ、その融合は時間の問題p18.
←ニュースへのコメントをツイッターで表示したり、クイズの回答を求めたり、アンケートを活用するなど、この4年で活用が進んできている。さらにハイブリッドキャストの登場、ドラマのネット同時配信など、技術の進展によりとどまるところを知らない。


◇、2006年7月の立ち上がったJ-CASTは、アクセスによる都道府県判別を自動で行って記事や広告を地域別に表示するサービスの技術特許を1998出願2001年に登録し、エリアマッチ広告ができるが、地方分権地産地消、地域経済、コミュニティ復権という時代の流れに乗ることができたp39。


◇新聞やテレビがプッシュ型(百貨店も)に対し、ネットはプル型(無数の専門店街のようなもの)で、利用者の接点が異なり、コンテンツの制作目的が、得意な分野で特色のあるページを提供すればよくp41、また、時間がたっても読めるように工夫しp31、全ての記事をサイト内に保存しているp78。当初「コピペサイト」とか「Jカス」と蔑称されたこともあるが、新聞にとっての街ダネがあるように、膨大なネットから情報リーダーを見つけてネタを探すことにも意味があるp58。ネットで街ダネを見つけるためには、「ネット情報の在りか、流れ、そして技術に詳しくないと務まらない。分業が確率してしまった新聞社では、ネットスキルを持つ記者は当分育たないp224」。
←このスキルというのは、なかなか獲得していくのが難しいというのが実感。


◇検索大手のヤフーは辞書の記述方式で人による編集重視派で、グーグルは新しい情報、ニュースが上位に来るようにプログラムされているp96。新聞・テレビのニュース感覚と優先順位が、読者や視聴者と違うこともあるp157一方、ネット世論と選挙結果(自民のネガティブキャンペーンと民主が躍進した衆院選のケースp100)が違うこともある。また、記者クラブの存在そのものを疑い懸念を持つ人が増えていることが課題になる
東日本大震災での原発事故報道をめぐってその懸念はさらに広がった。またネット選挙運動解禁になったあとの参院選なども参考になる。都知事選ではどうなるだろうか。


◇スタート当時は、表紙画面のPVが、1か月で100万、歳と全体で月間PV1000万が、広告掲載の最低条件と言われたp101が、1年たった07年7月に1223万PVを達成したp106が、面白い情報を見つけるサイトからのリンクの影響(サイトからサイトへ、ブログからブログへと広がるp142)がかなりあったと考えられる。配信先を多く持つことで、知名度が上がっていった。読者は、慣れたサイトでできるだけの目的を果たしたいと思っているからp122。
←本著で登場する「くまぇり」や「きっこの日記」は、いまも健在なのだろうか…


とにかく時代の流れが速いことを実感するこのごろ。5年後は、10年後は、いったいどういう状況になっているのか。それを予感することは難しいが、想像を働かせながら考えていくしかないのだろう。


{1/19-25読了、記入は26}