読書録

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新・資本主義宣言

新・資本主義宣言 (7つの未来設計図)

新・資本主義宣言 (7つの未来設計図)

効率性や利益を追い求めてきた西欧型のモデルは破たんしつつあり、むしろ「三方よし」など社会貢献を意識してきた日本型経営をめざすことで幸せを感じることができるのではないか、というのが全体を通して感じた印象。7人の学識者や論客が現状の課題と未来への提言を記し、合間に3つの討論の内容が盛り込まれている。生活は便利になり、豊かになったはずなのに、心を病んでいる人が増え、いったい幸せとは何なのか、改めて考えさせられた。それぞれ説得力がある一方、編者の経歴から政治色があるという印象を与えるとしたらもったいない気もするが、読みごたえがあった。


内容がわかる出版社のサイトが見つけられなかったので、久しぶりに以下の形で引用する。
<目次ー引用>
序 古川元久 「新しい資本主義」を考える;
◇限界が見えている資本主義に対し、幸福度に資する成長とは、近江商人の「三方よしp13」や龍安寺の石「吾唯足知(われ、ただ、足るを知る)p17」の精神をベースに考える。


1 中谷巌 西洋主導の資本主義体制に代わるもの;
◇右肩下がりの不利益分配の局面では、サンデル教授が唱えた自己利益より「共通善」を優先させる考え方が必要にp44
◇日本の課題は、1豊かな超高齢社会の創造、2脱原発、3農業の復活で、交換を軸にした成長から、贈与の精神を組み込んだ体制にp54-57.


2 川上量生 利益至上主義からの脱却で資本主義の崩壊を食い止める;
◇欧米企業では労働は技能として交換可能だが、日本ではやる気があれば職業選択の自由がありこの曖昧さが強みp63。本来は、「仕事はいやだけれど、食べるためには我慢してやれp65」と教えるべき。会社を存続させることが最優先されるべきで、資本主義を長続きさせるには、「利益率を追求しない世の中をどのようにして作っていくかp73」
◇国家とグローバル資本は相性が悪く、アマゾンは日本に税金を納めず、グーグルは日本の法律を無視し、ネットにも国境が必要と考えるp78


3 山田昌弘 「承認・評価」を買う幸福への新しい消費;
◇「神から与えられた自分の能力を最大限生かすために、あらゆることをする」というプロテスタンティズムの論理の一つが、マックス・ウェーバーが分析した資本主義の起源p92
◇年収の高さと幸福度は比例するが、1000万円を超えると家族に満足が下がるという読売新聞の調査があるp96。
p97:人間とは、自分の人生が肯定されたり承認されたりしないと幸福を味わえない存在である
◇『幸福の方程式』の3C:Cool Contribution Communication 自分を極め、人に必要とされ、大切にされるp104


4 永田良一  密教の視点から幸せの本質を見つめる;
◇幸福論のうち、ラッセルは他人との関係性で相対的な比較を考えないこと、アランは幸福を望み努力すること、ヒルティは一時の休息を得ながら働くこと、などだが本質的には「自分自身が真剣に取り組めてほんとうに充実した時間を持つのが幸せなのだということp120」と同じことを述べている。
◇一番良いのは、「夢を持ち、それを具現化するための目標を定め、そして、自分の欲を否定せずに、慈悲の心に満ちた社会の視点から感情をコントロールして、社会に貢献するために努力する、ときには休息をとり楽しむp125」という生き方。
◇楽しく仕事をするための5つの言葉(p126〜)1一日一生(今に生きる)、2日々挑戦、3目標共有、4自己成長、5勤労感謝⇒人の心が満たされるにためにはどのようにすれば良いのか?


5 渋澤健 渋沢栄一に学ぶ持続性のある資本主義;
p153:『論語と算盤』…「正しい道路の富でなければ、その富は完全に永続することはできない。従って、論語と算盤という懸け離れたものを一致させることが、今日のきわめて大切な務めである」…「道徳的資本主義」
ノーベル賞受賞者で、フリードマンの「効率性」からユヌスの「多様性」へ繁栄モデルの変更をp167。


6 黛まどか 足し算から引き算の時代へ;
p187:拒絶より受容を、対立より融和を好む日本人の精神性がある。主張するではなく、“委ねる”のだ。
◇『人情噺文七元結』賭博の借金を返すため登場人物が助け合う話⇒どんなに辛い時も、自分のことは二の次にして人を思いやり、支え合い、何かを諦め、何かを捨て、最後は笑い合って終わる。あえて白黒はつけず、曖昧なままにして許しあう。そこに日本人の知恵と逞しさがある。


7 田坂広志 「目に見えない資本」を見つめる日本型資本主義の原点へ;
p220:「五つのパラダイム転換」1.操作主義経済から複雑系経済へ:2.知識経済から共感経済へ:3.貨幣経済から自発経済へ:4.享受型経済から参加型経済へ:5.無限成長経済から地球環境経済へ:
◇日本型経営には企業の社会的責任を論じる思想があり、渋沢栄一の「右手に算盤、左手に論語」、住友の家訓である「浮利を追わず」、近江商人の「三方よし」など。p226
◇日本においては、早期退職に憧れるような価値観や文化はなく、「歳をとっても、命尽きるまで世の中に役に立ちたい」という言葉や「天職」という言葉に象徴されるような、生涯、労働を通じて社会に貢献することを喜びや美徳とする文化があったp227
p241:(松下幸之助が語った3つの言葉)
1.企業は、本業を通じて社会に貢献する
2.利益とは、社会に貢献したことの証である
3.企業が多くの利益を得たということは、その利益を使って、さらなる社会貢献をせよとの世の声である


後序 水野和夫 新資本主義宣言;
◇(中見出し)近代の秋、富の集中と中間層の没落、西欧文明の破綻、二十一世紀の利子率革命と過剰資本、知(情報)と利子(時間)、絶え間ない闘争の終わりと勝負の終わり


本著については、「100円のコーラを1000円で売る方法」の著者・永井孝尚氏がブログで紹介していたので、そのサイトを紹介→ http://blogs.itmedia.co.jp/mm21/2013/08/1-99cd.html


あと、討論の中でツイッターで広がったという笑い話は知らなかったが、なるほどと感心する部分があり概要を備忘録としてメモすると→ある日お祖父さんさがやってきて、財産を残してやれない、で驚くと、借金がたくさんあるので返してくれと言われ唖然とし、「ついでに悪いが俺の老後の面倒を見てくれ」と畳み掛けられ、がっくり落ち込んでいると、最後に「おまえ、元気がないじゃないか。元気を出せ」といわれる…


{1/19-22読了、記入は26}