読書録

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世界でいちばん大切にしたい会社

世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー (Harvard Business School Press)

世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー (Harvard Business School Press)

会社は、投資家のための短期的な利益だけをめざすのではなく、社会のため役立つという目的で、働くことに意義を感じ、関わる人みなに誠実に対応するという意識の高さが、いま求められているということが、アメリカの実践などをもとに紹介されている。ある意味、近江商人の『三方良し』という世間の大切さが、今の時代になって改めてアメリカでも大切だと認識されたということだろうか。資本主義の行方をめぐってはさまざまな論壇が展開されているが、理論的に今後のあり方を示唆する一冊となっている。


出版した翔泳社のサイトには、概要や目次あり→ http://books.shoeisha.co.jp/book/b176397.html
(本書で初めて、この出版社を知ったが、『ソーシャルネットワークサービス利用ポリシー http://www.shoeisha.co.jp/privacy/social-policy/ 』を公開するなど、ICTと連動した新しい出版をめざす姿勢が興味深い)


印象に残ったポイントを以下、引用する
◇ビル・ジョージ教授の序文:「自社だけでなく、社会全体の利益も向上させる持続可能な企業を生み出し、これを持続させるために会社のあらゆる関係者を統合する術を示してくれた」(マイケル・ポーターの共有の価値観をつくり出し社会に貢献すべきという考えと一致し、資本主義が繁栄したグローバル社会に貢献する圧倒的な力として繁栄し続けられることを切に願う)

◇p11:本書執筆の主な目的は、意識の高い企業の誕生を促すことだ。コンシャス・カンパニーとは、1.主要ステークホルダー全員と同じ立場にたち、全員の利益のために奉仕するという高い志に駆り立てられ、2.自社の目的、関わる人々、そして地球に奉仕するために存在する意識の高いリーダーを頂き、3.そこで働くことが大きな喜びや達成感の源となるような活発で思いやりのある文化の根ざしている会社のことだ。こういう企業が増えれば、だれにとっても素晴らしい世界が生み出されると我々は心の底から信じている。
→p334に我々の夢は単純として「いつか、あらゆる企業が存在目的を意識して活動し、すべてのステークホルダーの利益を統合し、コンシャス・リーダーを育てて登用し、信頼と説明責任、思いやりの文化を築き上げる日がやってくること」とまとめている。

◇1989年に世界の大変革:3つの重大事件(p35〜38)
1.ベルリンの壁崩壊:資本主義と民主主義が勝利で、どの程度の経済的自由かが論争に
2.ウェブの誕生:人類共有の神経系に発展し情報の平等主義が広がる。ソーシャルとモバイルで互いが急速につながっている
3.中年期に入った米:心理的重心が中年期以上に移行し、時代精神が他人への思いやりや意味と目的を求める気持ちの高まり価値観を重視へ
p39:「今日では、他人に配慮すること、人間関係を育てること、そして思いやりーこうした価値観が社会の隅々まで広がってきた」

◇コンシャス・キャピタリズムの4つの柱(p43〜)
1.存在目的:(例p62、ディズニー=創造力を駆使して数百万の人びとに幸福をもたらす、J&J=痛みと苦しみを和らげるetc)
2.ステークホルダーの統合:
3.コンシャス・リーダーシップ:(p226、攻撃・野心・競争など主に男性的だったが、女性的な価値観の高まり=配慮や思いやり、協力、右脳的な特質)
4.コンシャス・カルチャー/マネジメント:(p275〜TACTILE:信頼Trust、説明責任Acountability、思いやりCaring、透明性Transparency、誠実さIntegrity、忠誠心Loyalty、平等主義Egalitarianism)

◇p67:フランクルの教えによると、人々は重要な仕事をすること、他の人びとを無条件に愛すること、そして自らの苦しみに意味を見出すこと、という三つの方法で人生の意味と目的を発見できるという:ロゴセラピー
←『夜と霧』をアメリ国会図書館の調査で人生に最も影響を与えた本ベストテンに入ったと紹介しているが、これまでも何度も触れてきた本で、確かに影響を受けた

◇ギャラップ調査によると、幸福感を決定するもっとお大きな要因は富(一定額を超えると横ばい)や健康(当たり前)ではなく、「良い仕事」p113。

◇マスメディアは論争controversy、対立conflict、変化changeという3つのCに注目し報道したがるが、でっちあげや娯楽や煽情主義に手を染めることに関心を持ち多くの人々が信頼を低下させている。ステークホルダーと建設的に関わりある手段としては、しだいにソーシャルメディアを最も重要とみなすようになってきたp205-207

◇ベストのリーダーとは、中国の医師・扁鵲の物語のように問題が発生する前に防いでしまう(p236)「コンシャス・リーダーが備えるべき最も重要な美徳は、おそらく誠実さだp238」偽りのなさ、公平、信頼、道徳的勇気という意味が含まれる。
→ハワード・ガードナーの調査で感情が伴ったときに人は変わることができ、成果を上げるリーダーは、「私はだれか」「私たちはだれか」「私たちはどこに行くのか」という三種類の物語を語っているというp241
→人々と会社の存在目的への奉仕を何よりも重視するリーダーが率いる企業では、フレッド・コフマンの言葉で「個人レベルでは平和と幸福、コミュニティでは尊敬と団結、そして組織にとっては職務の達成」が実現するp245
→リーダーになるには、とりわけ「共感力」つまり他の人がどう感じるかを感じ取る能力を養う必要があるp255

◇エンパワーメントで権限を社員にp302-303、ノードストロームの従業員ハンドブックは1ページで「一番の目標は、お客さまに格段のサービスを提供」「ルールはただ一つ、あらゆる場面で的確に判断せよ」これだけです」
→自己管理の余地が広がるような条件を整えることなのだp314


一点だけひっかかったのは、著者のホールフーズが6万7千人以上を雇用しながら労働組合に加入している社員が一人もいない(p202)労働協約が締結されたことがない(p205)と、従業員との関係の良さを強調していたが、トップや体制が変われば流動的な要素もあるとも考える。


{8/31-9/3読了、記入は9/7}