- 作者: 香山リカ
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2016/02/10
- メディア: 新書
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2015年の安保法制をめぐる論議などをへて、著者は、社会状況が右傾化した背景には、リベラル派知識人が行動しなかった責任があると分析して、「自由と平和と民主主義のためにジブンができるあらゆることをやっていこう(P235)と決意する。
世代的にには近い方ではあり、著者が紹介するラカン派やポストモダン哲学(リオタールが大きな物語の凋落P114)、ニューアカデミズム(ドゥルーズ、ガタリ)など、言葉では聞いたことはあった程度で、著者ほどしっかり学んだことはなかった。こうした時代を経たいまの社会状況の変化というのは、知識人の対応の問題という訳でもないような気もする。
本著では、古谷経衡氏の「ネトウヨの中心は、低学歴ニートではなく大都市在住の30代〜40代のミドルクラス」という分析や、大阪ダブル選挙の維新圧勝について、松谷満氏が背景にある要素として「強いリーダーシップ」「愛国心」「成長志向」への共感(P52)があり、「ナショナリズムと新自由主義の肯定」とまとめていることなど、参考になる。また、対談で湯浅誠氏が「民主党の政権交代失敗と大きな流れで、グローバリゼーションが広がり生活が脅かされるという文脈でナショナリズムが高まっている(P215)というのは、欧米をみても同じ流れのような印象だ。トランプ政権も誕生し(本著が出たときはまだ)、ここをどう捉えたらよいのか、はきちんと考えたい。
なお(ソーシャル)リベラリズム(社会的自由主義)については、P111に、「基本的には個人の自由を尊重し、権威・権力に対抗しながらも、一方で「社会的公正さ」を重視し、社会福祉や富の再配分の仕組み作りを政府が担うべき役割も大きいと考える政治的立場
発刊したイースト・プレスのサイト→ http://www.eastpress.co.jp/east_shinsho/shosai.php?serial=2516
(この出版社は、今回が2回目:http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/mobile?date=20160920#1474390991 )
◇出版社の憲章が掲載されていたので、引用してメモ。理念、目的、指針ごと3つづつで、端的に言い表している→
<基本の理念>
第1条 正直であること
第2条 開かれていること
第3条 敬意を払うこと
<会社の目的>
第4条 「知る喜び・考える力・生きる豊かさ」を提供する
第5条 「働く場所・自分への誇り・生活の糧」を確保する
第6条 「社会的支援・正義・改善」をおこなう
<業務の指針>
第7条 現実を受容する
第8条 望ましい姿を想定する
第9条 考える・見つける・始める
←第7条については、あまり見たことがないような指針かとも思う。
著者の本は結構、読書禄にも記録があるのは以下
2015-12-20 『執着 生きづらさの正体』
2011-11-13 『きびしい時代を生きぬく力』 江川紹子と共著
2010-05-17 『しがみつかない生き方』
2009-01-26 『生きてるだけでなぜ悪い』 中島義道と共著
2009-01-09 『おとなの男の心理学』
{2017/7/22-24読了、記入は29}