読書録

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正しい恨みの晴らし方 科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ新書

正しい恨みの晴らし方 (ポプラ新書)

正しい恨みの晴らし方 (ポプラ新書)

 SNSは妬みや恨みが燻りやすい世界を具現化したもので、怨みや妬みの正体を知り、それらを有効に活用する術を提案したいp5と、本書の冒頭にある「はじめに」で紹介し、心理学と脳科学の両面から、その背景や対応策を解説している。「リア充爆発しろ」というネットスラングp40の背景として、「幸せたっぷりな投稿に食傷気味になるなど、さしずめ”妬みの展覧会”p43」という面があることには、思いをめぐらさないといけない。

 
 スポーツ選手など能力や格が違う相手には、妬みや羨ましいなどと思わないものの、自分と相手との差がわずかだと妬みが強くなるp49というのも、納得する。ゆえに平等主義を好む日本では、アメリカとの比較調査で、より頻繁にこの感情を感じていることがわかったというp59。また最後の方で、ただ憧れなら穏やかでいられるが、超えたりライバルと思ったとたん妬みになる、能力があればいいがないと苦しく恨みに変わることもあるというのは、なかなか生き方として難しいp237。


 なお、学術上、(p74)妬みと嫉妬の違いを紹介している⇒
◇妬みenvyは、自分の持っていないものを、自分以外が持っていて、自分も手に入れたいと願い、相手に覚える不快な感情で、(未来志向ともp228)
◇嫉妬jealousyは、自分の持っているものを、自分以外はもっておらず、奪いにくるのではないかいう相手を排除したいと願う不快な感情p74(過去思考ともp228)
という違いがあるというが、これはなかなか理解するのに時間がかかる。なおこのネガティブ感情をコントロールする第一歩は、冷静に自分を見つめる視点を自分の中につくり、分析して、本当の目的をクリアに見ることp91とのこと。


 ネットでの炎上で加害者を叩く行為についても、自分の中の正しさにこだわらないことだというp116。この社会正義をめぐる問題は、トップの引責辞任などの背景にもある。「ミルグラム実験」p137〜の電気ショックをあたえる権威への服従実験というのは、別の本でも読んだ記憶がある。またジンバルドーの監獄実験で正義の具現者にたやすくなってしまうケースp143も紹介されているが、改めて、「ごく普通の共感力を持った平均的な人の過半数が、権威と正当性に従って誰かを攻撃する行動に出ることがわかった」p140というのは、いつ自分もそうなるかも知れず、心にとめておかなければならないと思う。


 自分の利得を減らしても、相手の利得を大幅に増やす「親切行動」と、相手の利得を大幅に減らす「いじわる行動」が頻繁におこる不思議さの研究として、大阪大学の「公共財供給」に関する実験p177で、受信料の「タダ乗り」に対して「いじわる行動」が起きるために協力せざるをえなくなるp178ということが紹介され、脳科学では「親切行動」の方が不自然というのは興味深かった。また苦情対応から、ネガティブ感情の処方箋として、男性には正義、女性には共感p184というのも、なるほどと納得する。


 ネガティブ感情の意味として、紹介されているインドの阿闍世(あじゃせ)コンプレックス:母はなぜ自分を産んだのか、という物語については、奥深い。「ままならない世のなかで生きていかなければならないという条件のもと、人間はどのように苦しんできたのか。そしてどのような態度で生きていけばよいのかp203」という問いへの答えは、脳科学の立場からは、p212「ネガティブ感情を持つことで、人は強くなるからです。そして強くなりすぎては困るから、ネガティブ感情に罪悪感というブレーキがかかるようにできている」としている。


 生きる上でのメリットがあることを認識しながら、考えていこうということで、「生物は生き延びることと子孫を残すことがミッション…より楽しいことを見つけておもしろく生きた方が得p238」というのが、わかりやすい


発行したポプラ社のサイトに目次あり⇒ http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=82010530


{4/14-15読了、記入は17}