- 作者: 渡辺靖
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/10/21
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 58回
- この商品を含むブログ (25件) を見る
自由や多様性、民主主義といったアメリカ建国の理念が、「逆説」のようになっている現状を、アメリカでのフィールドワークや多種多様な論述からの引用などを通して描いている。のだが、なかなか理解するのが難しい面があった。
ある意味、学生時代に学んだ論文を読み直しているような錯覚にもおそわれた。リースマンの孤独な群衆は当時熟読したし、スタンレーホフマンは原書で読んだ覚えがある。本著で扱っているのは、地域研究なのか、政治学なのか、社会学なのか、文化人類学なのか、どういうパラダイムにあわせればいいのか、受け止め方で混乱するところがあった。こうした論考に離れすぎたためだろうか?
オバマ大統領の言葉なども多く引用され、ジャーナリスティックな面も持ち合わせていることから、読み物としては面白いのだが、トータルとしてどう捉えていいのか、目次を引用することで、あとで振り返る際の参考にしたい。
ただ、著者のアメリカに対する信頼は、次の言葉の引用で強く感じた。
p215:2008年の大統領選挙の翌日、コンドリーザ・ライス国務長官は、「この国の最も偉大なことの一つは驚きが絶えない点にあります。自らを再生し続けている点です。あらゆる困難や予想を打ち負かし続けている点です」と感動の面持ちで述べた。まさにアメリカに向き合うことの難しさも、そしてアメリカを見つめることの悦びも、すべてこの言葉に集約されている気がする。
p218:(コリン・パウエルの言葉)「・・アメリカでイスラム教徒であることに何か問題があるというのか。答えは否です。アメリカではそんなことが問題であるはずがないのです」こうした自由な精神に導かれた、フェアなアメリカは私を魅了してやまない。それはまさに建国の理念を生き抜こうとするアメリカに思える。
(目次−引用)
第1章 アメリカン・デモクラシーの光と影
1「回帰」という「変革」;
2もう一つの「回帰」;
3オバマイズム;
4ニューオリンズ再訪;
5逆説的な現実;
第2章 政治不信の根源
1イラク開戦決議の日に;
2法人化される民主主義;
3溶解する二大政党;
4ゲーム化する選挙戦;
5包摂されるジャーナリズム;
第3章 セキュリティへのパラノイア
1ゲーテッド・コミュニティ;
2メガチャーチ;
3第三世界化するアメリカ;
4カラーラインの政治学;
5恐怖の文化;
6オーディット文化;
7孤独な個人主義;
第4章 多様性の行き着く先
1多様性の源泉;
2保守反動;
3左右の原理主義とその陥穽;
4多様性と市場主義;
第5章 アメリカニズム再考
1強烈な自意識;
2帝国論;
3アメリカの省察;
4アメリカへの眼差し;
5もう一つの逆説;
{4/7-11読了、記入は16}