読書録

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時代のデモクラシー 宇野重規 著

〈私〉時代のデモクラシー (岩波新書)

〈私〉時代のデモクラシー (岩波新書)

本著を読みながら、引用される槇原敬之の『どんなときも』のメロディーが頭の中で流れていた。『世界に一つだけの花』とあわせて、携帯の着メロにも使っている。
くりかえし強調される<私>意識というのはよくわかる気がするし、<私>と<社会>や<政治>との関わりについての問題状況は、古典的な権力をめぐる政治学の議論から、こういうところに地平を移しているのかと感じた。
トクヴィルの平等化の考え方を中心に据えて議論を展開することは、理念的にはなるほどと思うものの、具体的にどうするのかというシステムや制度的な面についての考察も欲しいような気がする。ただ、こうした理念にもとづく論の方が、一般的には普遍性があって強いのかも知れない。

(目次-引用)
第1章 平等意識の変容
1グローバルな平等化の波;
p10:平等・不平等をめぐる絶えざる異議申立てこそが、歴史のダイナミズムを生み出していきます。・・トクヴィルは、このような意味における「平等化」を人類の歴史の不可逆な趨勢であると考えました。

2可視化した不平等;

3「いま…この瞬間」の平等;


第2章 新しい個人主義
1否定的な個人主義

2「自分自身である」権利;

3自己コントロール社会の陥穽;


第3章 浮遊する「私」と政治
1不満の私事化;

2「私」のナショナリズム
p112:(小熊英二の「癒しのナショナリズム」で、新しい教科書をつくる会の幹部と参加者の分析から、グローバリゼーションの結果、伝統的なムラ共同体が解体するが、そこから遊離した個人による都市型のポピュリズムこそが、この運動の本質とみた)

3政治の時代の政治の貧困;
p119:現在日本の政治においてもっとも重要なのは、政治の意味の回復であり、そのような意味を回復するための、政治的な回路の再整備といえるでしょう。


第4章 「私」時代のデモクラシー
1社会的希望の回復;

2平等社会のモラル;
p163:私の尊重がエゴイズムではなく他者の尊重へとつながること。他者や社会から自分が大切にされていると思えるからこそ、他者を尊重し社会を発展させていくのだと思えること。このような倫理感覚が定着し、トクヴィルのいう「心の習慣」になってこそ、平等社会のモラルも可能になるはずです。

3“私”からデモクラシーへ;
p178:本書の結論としては、私が私であるためにこそ、デモクラシーが必要なのだということになります。私が私であるためには、私が私であることを確認するためのものが必要です。それを他者と呼ぶことができるかもしれません。

むすび
p184〜ますます強まる<私>の平等と個人主義を前提に、政治を立て直す道筋を模索してきました。本書の主張は以下の三点に要約されます。
1.<私>から社会へ:<私>は<私>を実現するために社会を必要とする
2.歴史の意味:私の意識こそが歴史の発展を産み出す
3.<私>が可能にするデモクラシー:私意識の高まりがデモクラシーの活性化を求める

{登録は7/5、6/14以来UPする余裕なく久々}