読書録

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[小説]再会

再会

再会

重松清さんは期待を裏切らない。どこか悲しいけど生きる希望を失わないお話が、心を洗濯してくれる。
最初と最後が、同じ街の出来事で昔と今、登場人物などが対になっている。
いろんな再会の形があって、登場する人たちは、みな、それほど幸せではないようにも思う。
でも、何が幸せなのか、ありふれた日常の中にも、物語や生き様があるのだろう。


(目次)
いいものあげる;地元資本vs大型ショッピングセンターで、小学生の子供達は・・お嬢さんだった美智子ちゃんと取引先の娘のスズちゃん、転校生のわたし、最後に告白する瀬尾っち。


ホラ吹きおじさん; 親戚中の鼻つまみ者のサブこと三郎おじさんと、真面目に生きてきた父親、主人公のヒロシは、父は尊敬するが、好きなのはおじさんだったのかも知れない。
p93:「体裁やら格好やらは、どげんでもええ。人間、生きとることほど大事なことはありやせんよ」
p104:おとなになるというのは、「余り」の出ない割り算を覚えるのではなく、「余り」を溜め込んでおく場所が広くなる、というだけのことなのかも知れない。


永遠;先天性の症候群を持ったユウちゃんとマナミちゃんの結婚式に、幼い頃の知り合いを呼ぼうと探す小学校教師。学校でも中学受験をめぐって友人同士が別のコースをあゆみ、最後には『また会おう』といえたらいい。

チャーリー;スヌーピー漫画のチャーリーに思いを語りかけながら、率先して学級委員などをつとめてきた僕こと村田が、先生に嫌われたと思った小学5年の時の話を思い出す。自分は大した人間ではないと気づきながら、なかなか人生は思うようにならない。


人生はブラの上を;オブラディ・オブラダの曲にのせて、運が悪くても幸せなことってあるかどうか。

ロング・ロング・アゴー;瀬尾っちが大人になり、うまくいかないこともある。すずちゃんと一緒に美智子ちゃんの灯籠流しをする。
p291:「もっとやりたかったなって思えたら、それがやり甲斐があたってことなんだと思うぜ、俺は」
p293:川島さんの言葉:「間違えているひとなんて、誰もいないと思うよ」「でも、間違えなくても、うまくいかないこととか、どうにもならないことって、あるよ」
p295:「全然うなくいかない人生でも、価値がないとか、意味がないとか、生きててもしょうがなかったとか、そんなことないと思う。・・・(笑った写真で)・・うまくいかなくても、いいこと、あった・・・」
「わたしはそう信じているから」と涙声で言った。
p296:「死んだ人のぶんもがんばって生きる、って嘘っぽいよね」と言った。「そんなのカッコよすぎるし、生きている人の勝手な理屈だと思う」