読書録

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『日本人と象徴天皇』 「NHKスペシャル」取材班 著

 

日本人と象徴天皇 (新潮新書)

日本人と象徴天皇 (新潮新書)

 
日本人と象徴天皇(新潮新書)

日本人と象徴天皇(新潮新書)

 

 

4月1日に新元号「令和」が発表され、ブームが続いている。


正直、元号より西暦を使う方が良いのではないかと考えてきただけに、一連の動きには驚く部分もあるが、本書を読んで、象徴が長年の経緯を経て定着したことも大きいのかもしれないとも感じた。随所で引用される世論調査の結果が、ここまで変わるものなのかと興味深い。

p110:1956年からミッチオーブームをへて1965年「憲法に関する世論調査」より
天皇が権限を持った方がよい 23.3から11.6%へ、今のままでよい47.6から61.7%へ

p165:NHK放送文化研究所の意識調査で1988年と1993年比較

+尊敬が28→21%、好感が22→43%、1991(H3)年雲仙普賢岳火砕流で被災地訪問

 

発刊した新潮社のサイトに目次あり↓

www.shinchosha.co.jp

 

元号にむけ、平成を振り返るメディアの企画が展開されているが、戦争がなかったということが一番重要とのこと。本書ではまさに、戦争とどう向き合ってきたか、が重要なポイントとして触れられている。

とりわけ、1975年9月~の訪米でスピーチした「私が深く悲しみとする、あの不幸な戦争」p140という表現で、米で好意的に受け止められることになったという。

靖国神社参拝が行われないこととA級戦犯合祀との関係について、保阪正康氏と御厨貴氏の見解p151を紹介している。

平成時代に入って、1992年には中国訪問で、「多大な苦痛を与えた不幸な一時期」p167との晩餐会発言で、謝罪の意を伝えようとしたと受け取られたと報じられたことから、市民の反応が良くなっていったという。

headlines.yahoo.co.jp

 

本書でも引用されている、「日本では、どうしても記憶しなければならないことが4つあると思います」という1981年皇太子時代の夏の定例会見での発言は、さまざま風化していく中でも心にとどめておきたい。終戦、広島と長崎の原爆の日、6月23日の慰霊の日の4つの日で、保阪正康氏は「非戦闘員が大量に死んだ日が共通で・・追悼していくということを自らに課す」p171と解説している。

本書の後書きは、番組の企画者だった林新プロデューサーで、2017年7月24日に60歳で病没する8日前の口述を、妻でノンフィクション作家の堀川恵子氏が筆記したという。
その中には、インパール作戦の番組制作などを通し、日本の組織の忖度による無責任体制は天皇制に根本があると考え天皇否定論者p183だったが、もし自分がそうだったらという視点をもってから目から鱗が落ち、二人の天皇がいなかったら戦後70年の平和国家はなかったと思うようになったという。なお、まえがきの東野真氏は、「60歳の若さで鬼籍にに入ってしまった」と記述していたが、確かにもっともっと仕事がしたかったのだろうと思う。

ご冥福をお祈りいたします。

{2019/3/26-4/2読了、記入は4/6(土)夜}