読書録

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新聞記者

新聞記者 (角川新書)

新聞記者 (角川新書)

 官房長官会見で鋭い質問をぶつける姿がメディアやネットで取り上げられ、よく知られるようになった記者の自伝。記者を目指した生い立ちや、これまでの経験が率直に語られている。


 事件記者として極めて優秀で、初任地の千葉で県版からはみ出すネタを連発し、読売新聞から何度か誘われるが、業界紙の記者をしていた父親が報道姿勢が政権よりと疑問を示したころからやめる。そもそも記者をめざすようになった原点は、吉田ルイ子さんの『南ア・アパルトヘイト共和国』という中学生(東京学芸大付大泉小中出身)のころ母からもらった本。他社の先輩記者と結婚し、子どもを二人育てつつ、夜討ち朝駆けが厳しくなった頃に、武器輸出の企画取材にあたり、これは本にもなる。森友問題は東京-中日新聞のテリトリーとは離れていたので取材体制も弱かった中、編集局長にメールしたら取材班ができて、その取材にあたるなか、官房長官の会見にもでるようになった・・・と覚えている範囲で印象に残ったことを時系列で書いてみる。にしてもスゴイ記者だ。
 

発刊したKADOKAWAのサイトに目次あり⇒ http://shinsho.kadokawa.jp/product/p-321707000063/


 本書には失敗談についても率直に語られている。
◇慶応大学法学部政治学科出身で、読売、朝日、日経は一次試験の筆記で落ち、NHKは面接は通ったが二次の筆記で落とされ、最後に北海道と東京は筆記でクリア、先に連絡がはいった東京に2000年4月入社(ストレートより2年遅れ)p41-43

◇千葉2年横浜1年の3年で社会部東京地検特捜と司法クの担当になり、読売からの誘いを断る。日歯連事件でリストを入手し先行するも、読売に橋本派1億を抜かれ、坂口厚労相へ2000万円も否定という独自ネタを出すが、この件で特捜部から2日間取り調べを受けることに。読売は喜田村弁護士が顧問としてついたが、自ら厳しい取り調べにヒントぐらいはと甘えを漏らしてキャップから激怒され、取材源秘匿を再認識するp75-89

◇5/17に朝日新聞「政府のご意向」スクープは最終版、前夜『ニュースチェック11』で官邸の最高レベルを黒塗りで消して文書を放送。政治家はNHKに先んじて報じられることを極端に嫌がる、取材対象の態度も変わる・・前川前事務次官のインタ取材も映像がニュースとして報じられていないことも後に判明、東京新聞もチームを組むことに・・p122-125

◇無実の暴力団組長を容疑者として顔写真を添えて逮捕へと記事、組長は笑って許してくれたp194

◇さいたまで銃刀法違反事件で地検検事が裏取引をスクープしたが、その後その検事は大阪地検特捜で村木元厚労事務次官の調べにあたる、甘い処分でつながる。これが最も印象にのこっている。p194-202、+千葉支局時代に鑑識の刑事から言われた「話すかどうかは記者の情熱がすべて」という言葉を信じて取材してきたことが形に+この件をうけ「紙と電波、あるいは新聞と雑誌といった垣根を飛び越えて、メディアが横につながっていくことが状況によっては必要なのではという考えは、阿部政権になってさらに強くなった」


 ラストの方の著者の思いを引用p215-216
「私は特別なことはしていない、権力者が隠したいと思うことを明るみに出す。そのために、情熱を持って取材相手にあたる。記者として持ち続けてきたテーマは変わらない。これからも、おかしいと感じたことに対して質問を繰り返し、相手にしつこいといわれ、嫌悪感を覚えられても食い下がって、ジグソーパズルのようにひとつずつ質問を埋めていきたい」


{2018/6/5-7読了、記入は6/10日曜}