読書録

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カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み

カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み

カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み

 テレビでもよく取り上げられ、好業績を続けているカルビーの経営者が退任することが先月ニュースになっていたが、本書を読むとその強さの背景がよくわかる。副題にあるとおり、お客様のクレームを拾い上げてファンに変えていく、それも炎上によって企業は及び腰になるツイッターフェイスブックなどSNSの活用にも取り組む。あわせて本書の発行によって、さらにファンが増えるだろうし、その戦略はなかなかなものだ。

 お客様本位や第一主義というコトバはよく聞くが、カルビーでは行動規範として「お客様ほんいの徹底」というスローガンを掲げていると本書で紹介しているが、HPでも理念を表示している⇒ https://www.calbee.co.jp/csr/philosophy.php
「私たちは、何よりもお客様が第一であることを徹底し、お客様から高い信頼と満足を頂けるよう、安全で質の高い製品とサービスの提供に努めます」
 そして、問合せをして再購入した率が、一般的には82%に比べ、95.6%と高く、それは、お客様に満足いただける対応(守り)、2関連部署へお客様の声を伝達(攻め)、の二つの使命を全うできる仕組みと努力があるからだと説明している。(はじめに、より)



発刊した日本実業出版社のサイトに目次あり⇒ http://www.njg.co.jp/book/9784534055316/

プロフェッショナルで松本晃氏⇒ http://www.nhk.or.jp/professional/2017/1002/index.html

東洋経済の記事:カルビー、「カリスマ経営者」突如退任の理由偉大すぎた松本会長は、なぜ辞めるのか
https://toyokeizai.net/articles/-/214517



 とても参考になる内容が盛りだくさんで、いくつか備忘録として以下に引用
◇自主回収における基本方針(2000年のとかげ死骸で6万、2001年に遺伝子組み換え混入で回収を受け)
⇒本書p29だが、HPにも表示あり。リスク対応の基本としても参考になる。昨今のセクハラをめぐる財務省の対応など、ほとんど危機管理になっていないのに比べると、こうした姿勢が大切なのだとも感じる。
1顧客優先 新たな被害者を出さない
2情報開示 会社にある情報は隠さず公開する
3率先垂範 トラブルから逃げず、トップマネジメントは率先して問題解決にあたる
4スピード 他の全ての仕事に優先して、出荷された商品の回収をはかる
5再発防止 再び同様の問題を起こさない


◇本書で紹介されている企業理念=グループビジョンはHPでも会社情報のトップに掲載されているが、p33で、ステークホルダーについて同列だったのが、2009年から序列をつけ、「顧客・取引先から、次に従業員とその家族から、そしてコミュニティから、最後に株主から尊敬され、賞賛され、そして愛される会社になる」という表記で、顧客こそ最優先を明確に示したということが紹介されている。 http://www.calbee.co.jp/company/rinen.php


◇指摘を改善改良のチャンスとしてとらえ、お客様は商品を買う、顧客は継続して、ファンは周囲にも勧めてくれる、良い点を代弁してくれる、と考え、「指摘の一つひとつに真摯に対応し、信頼を得てファンを増やせば、それが結果として安定した経営につながっていくと信じている」p55、としている。


◇お客様の声を大事にしなければ、真意を知ることができない、チャンスを見逃してしまう、企業ブランドに傷がついてしまう、のではないかという3つのポイントを考え、これを社内全体に浸透するようにしたp98


◇ネットやSNSの活用は、お客様とのコミュニケーションを大切にしていくうえで、もはや欠かせないツールだとして、2014年3月に、ソーシャルメディアポリシーとして規約を制定したp145と本書で説明。これもHPで公開している⇒ http://www.calbee.co.jp/socialmedia/policy.php
・私たちは、良識ある社会人として誠実な態度でコミュニケーションを行います。
・私たちは、第三者の発言に謙虚に耳を傾ける姿勢をもちます。
・私たちは、情報の発信や対応に責任をもち、誤解が生じないように充分注意をします。
・私たちは、著作権や肖像権、プライバシーなどの第三者の権利を尊重します。
・私たちは、法令・その他社会規範を遵守します。


◇後発になった課題として、p148〜149に3点をあげている。
1)相談室に寄せられるネガティブな声に過敏になって、オープンなSNSで誠実に対応できるか二の足
2)匿名性のツイッターの雰囲気やカルチャーにどう入るか
3)企業のソーシャルメディア疲れで、2013年にSNS対策プロジェクトを発足させた


◇ウェブサイトの訪問は35〜55、フェイスブックは25〜35、ツイッターは15〜25とユーザー属性や世代が違い、コミュニケーションを変えていく+複数の接点があるお客様のほうが、カルビーに対する好感度満足度が高くなる、社内の調査でわかった。反応が良く満足されている。p150〜151


フェイスブック登録者数は11万7000人で、エンゲージメント率は4%(一般が1.9%)でトップクラスp152
メリットp159は、
1)簡単かつスピーディにお客様とのコミュニケーションがとれる
2)最新の投稿から企業やブランドの個性を感じてもらえる
3)画像やコメントのシェアによって情報共有が確実にできる
デメリットは
1)SNSで炎上した際の信頼や評価の低下
2)情報漏えい時の影響が大きい
3)一度拡散してしまった情報は収拾がつかなくなる
⇒ネット監視システム会社と連携しながらSNSを活用p162、
+ネガティブワードの登録で検知されれば相談室長と広報、リスク管理の三社にメールが届くp163


◇p167:電話でも対面でもネットでも、お客様対応とは、一つひとつの案件に対して「漏れのない丁寧な対応を積み重ねること」これ以外に道はないのです。それを真摯に、そして愚直に継続することこそが、お客様の信頼を勝ち取ることにつながるとわたしたちは考えています。
+p170:ネットやSNSを活用しているお客様の行動導線を先読みして、正しい情報を迅速に提供する。これがお客様相談室の主導により情報発信している相談室だよりのメリットなのです。


カルビーの社員がまずカルビーのファンになるp181
・自分たちの商品に自信をもち、自分たちの商品を愛し、そして自分の仕事に誇りをもつこと。当たり前のようですが、その当たり前のことができなければ、当然ながらファンであるお客様からの共感を得られないのではないでしょうか。⇒「インナープランディング」自らのブランドを社内の人間に浸透させる啓蒙活動のこと、社内に多くのファンを育てることが大切、離職率の低下、誇りとやりがいにつながる。


 
 引用がかなり多くなってしまったが、就活のシーズンを迎え、こうした本やサイトは、志願者にとてもよいイメージを持ってもらえるのではないかとも考える。


 
 また、お客様相談室といえば、『神様からひと言 荻原浩 著』 
http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/mobile?date=20170421#1493434857
が思い出されるが、その後、ドラマ放送は中止になってしまい残念。
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/272764.html
「2017年6月10日から総合テレビで放送予定だった土曜ドラマ「神様からひと言〜なにわお客様相談室物語〜」(全6回)につきまして、主演している小出恵介さんの所属事務所より、小出さんを「無期限活動停止にする」と連絡がありました。「未成年者と一緒に酒を飲んだ」など、と聞いています。これを受けて、NHKとしてもご出演いただくことはできない、と判断し、10日からの放送を中止し、別番組に変更することとしました」
まもなく1年になるが、小出さんはその後どうなったのだろう、もう放送されることはないのか・・・


{2018/4/10-11読了、記入は4/21}