読書録

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憲法改正とは何だろうか

憲法改正とは何だろうか (岩波新書)

憲法改正とは何だろうか (岩波新書)

 扉に書いてある通り「現憲法の改正規定第96条の成立過程をたどり、歴代首脳の封印を解いた戦後60年の「改正手続法」の問題点と、安倍首相の憲法観の危うさまでを論じる」という、憲法改正に批判的な立場からの論考。

 改正手続をめぐる動きを紹介した第3章では、1989の冷戦終結後、まず1994年11月に読売新聞社が自ら改憲試案を公表して先鞭をつけたp103ことをはじめ、与野党の攻防など今に至る流れを詳しく紹介している。最低投票率を導入するかどうかをめぐっての議論も知ることができた。

 また第5章では、安倍首相の憲法改正理由について、2004年2月の『論座』誌上で、(p197-198)、1)現行憲法の制定過程に問題があった、2)制定から半世紀以上経過して時代にそぐわない条文や新しい価値観が生まれている中で見直していかなければいけない条文が出てきた、3)新しい世紀を迎えてわれわれの手で新しい憲法をつくっていこうという精神こそが新しい時代を切り開いていく、ことだとして紹介しつつ、それぞれ批判して、「危険きわまりない改憲論者」だと結論づけている。
 


発刊した岩波書店のサイト→ https://www.iwanami.co.jp/book/b280259.html



 ちょうどニュース番組で、自民党憲法改正案関連への専門家インタビューで登場していたことを思いだし、検索してみると、番組の概要や登場人物を紹介しているサイトがあることに気付いた→ https://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/nhk/201/696919/ 該当部分を一部引用すると
憲法9条での自衛隊に関する議論について大きく動いているという。自民党自衛隊の明記などについて、衆参両院の憲法審査会で幅広い合意形成を図るなどとした運動方針を決定したという。市民の間でも憲法9条について議論が行われているという。自民党による憲法改正の専門家の意見が報じられた。スタジオでは憲法9条について改正が必要というものと必要でないという意見で分かれていたと話題になった。注目条文は「必要最小限度な自衛措置」と「実力組織」という部分だと伝えた。新たな案では「必要最小限度」という条文がなくなっているという。スタジオでは議論を深める事が重要と報じた。】なのだが、これは自動翻訳でAIを活用しているのだろうか・・・ページの下には、キャストとして著者の名前と、もう一人の専門家・井上武史氏の名前が表示されていた。


 また、リアルタイムで収録と銘打つJCCのサイトでも、この憲法改正論議について番組を紹介していた https://jcc.jp/news/13347571/ こちらも引用してみると違いがわかる。
【04/04 21:32 NHK総合 【ニュースウォッチ9】
自民党憲法改正の方向性・注目点は
自民党憲法改正の方向性。
条文案は、今の9条の1項、2項はそのまま残して、新たに9条の2を設けるという考え方。
注目:「実力組織として自衛隊を保持する」。
自衛隊という文言が明記。
自衛隊を明記したこの案をどう見るのか。
9条の改正を巡り、立場が異なる2人の専門家に話を聞いた。
九州大学・井上武史准教授(改正議論を進めるべき)は「自衛隊に対する違憲の疑いを払拭する意味での改憲という目的としては許容されるのではないか」、北海道大学・高見勝利名誉教授(9条改正に慎重)は「不必要な憲法改正は絶対にやらない前提で」と述べた。
2人は条文案で注目するべきだと指摘した点は「必要な自衛の措置を取ることを妨げず、そのための実力組織」。
政府の見解「わが国を防衛するための必要最小限の実力組織」と一見似てるが、条文案には「必要最小限度」の文言がない。
この点について、2人の考えを聞いた。
井上准教授は「何を実現しようとしているのかもうちょっと議論や審議であきらかにして国民に問う」、高見名誉教授は「原点に立ち返って問題を考える必要がある」と述べた。
日報について言及。】


なお、番組のサイトでも、抄録として紹介していた→ https://www9.nhk.or.jp/nw9/digest/2018/04/0404.html 専門家の部分を引用↓
【『改正議論を進めるべき』 九州大学 井上武史准教授
「9条については自衛隊違憲かどうかというのは60年間ずっと争われてきた。
思うんですよね。
現在も決着がついているとは言いがたい状態。
ただ、実態としては存在している。
自衛隊に対する違憲の疑い、これを払しょくするという意味での改憲というのは、目的としては許容されるのではいか。」

『9条の改正に慎重』 北海道大学 高見勝利名誉教授
「最高規範としての憲法を維持するためには、不必要な憲法改正は絶対やらないという前提で、(自衛隊の)違憲論をなくすために変えるということは意味のないこと。
権力に対する縛りということを、どういうふうに変えていけばいいのか、変えなければどういう不都合が生じるか、その説明がない限り憲法改正は必要ない。」
桑子 「『必要最小限の』という文言がなくなっていますね。」
有馬 「この点について、お2人の考えを聞きました。」

『改正議論を進めるべき』 九州大学 井上武史准教授
「新しい案というのは『必要最小限度』という、いちばん肝のところを外している。
改憲によって提示された条文によって何を実現しようとしているのか、もうちょっと議論とか審議で明らかにし、そこを深めて、そのことを国民に問うのが本来だと思う。」
『9条の改正に慎重』 北海道大学 高見勝利名誉教授
「戦力に至らない、そういう自衛のために必要最小限度の実力ということに、いわば限定してきた。
その限定してきた部分がいわば取り払われ、(自衛隊が)実力組織においても大きくなる。
どういう思いで、この9条のある憲法を運用しようとしたのかという、そういう原点に立ち返って問題を考える必要が出てくる。」


 放送された番組の内容というのが、日々記録されているということを知る。あわせて、憲法改正をめぐる問題は、国民投票法の改正をめぐり、いまも与党内でも議論が続いているが、今後も注視していきたい。


{2018/3/29-4/5読了、記入は4/7}