読書録

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本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 「戦後再発見」双書 前泊 博盛 編著

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (戦後再発見」双書2)

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (戦後再発見」双書2)

 SACO合意から20年以上たつが、この間に、外務省機密文書の「日米地位協定の考え方」を、著者が琉球新報時代に特ダネとして報じていたことを、ほとんど認識していなかった。本書では、この協定の問題とスクープに至った経緯などの過程も垣間見ることができ、朝鮮半島情勢も流動的ななか、改めてきちんと考えておく必要があると感じた。

 韓国ではレイプ犯が相次ぎ地位協定の運用改善(事実上の改定)に合意されたp194のに、米軍が占領していたイラク(日本の協定を研究p213)の地位協定よりもひどい状況にあるというのは、あまりに硬直しているというか、表と裏がありすぎるということか。

 米軍に与えられた特権はp316に主なものがまとめられていて以下
1)財産権、2)国内法の適用除外、3)出入国自由の特権、4)米軍基地の出入りを制限する基地の排他的管理権、5)裁判における優先権、6)基地返還時の原状回復義務免除、
伊江島事件で外務省が勝手に裁判権放棄を決めたことは三権分立違反の疑いあると認識p320
→銃を持った日本人がゲートの警備は銃刀法違反だが法律の解釈も強引にp325
→脱走日本人米兵の身柄で「二見寛事件」対応p326 など

 本書のラストは次のように結ばれているp396
「対等な日米関係の構築…その課題解決、実現の試金石となるのが、日米地位協定の改定であり、米国との単独安保体制の見直し、多国間安保体制の構築であると思います。戦後日本人が見失ってきた「自主独立」の気概が、いまこそ試され、求められています。


発刊した創元社のサイト⇒ https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=3675


 スクープについては、2004年元旦の紙面で機密文書が存在するという第一報を打ちp297、全文を1/13に8ページを使って公開したが、驚くようなエピソードがあった。
◇ネタ元をカモフラージュするため、入手から報道するまで7年かかったp299+犯人捜しをする外務省幹部に対し、米総領事館のパーティでわざとお礼を大声でかけて、その後動きは止まった。
◇外務省が否定するなか、1/9に執筆担当者を探し当てた。紙面では匿名だったが、本書では、丹波實元ロシア大使だったことを明かしp307、その細かい取材時のやりとりも紹介している。そこで10年後に増補版も作られていたことを知り、それも入手。



 北朝鮮の核開発とミサイル発射実験が続くなか、韓国政府が動いて、あっという間に米韓首脳会談が5月末までに開かれる情勢になってきた。安全保障と米軍との関係をどうとらえていくのか、事実を積み重ねて考えていくしかない。


 琉球新報が明らかにした文書について、「国益」が損なわれるという権力・体制側とメディアとの闘い、ちょうどまもなく公開される「ペンタゴン・ペーパーズ」 http://pentagonpapers-movie.jp/ を先に鑑賞する機会があったが、ジャーナリズムとは何かを改めて考える機会になった。

 あわせて、亡くなられた原寿雄さんが語っていた「大切なのは戦争を阻止すること」についても、考え続けたい。 


{2018/2/25_26読了、記入は3/11日曜}